サルコペニアと肥満が共存しているサルコペニア肥満とは?定義と対応について
サルコペニアと肥満が合体した病態、それがサルコペニア肥満です。サルコペニアとは、筋肉量の低下や筋力が低下した状態のことを指します。肥満とはBMIが25以上の体型のことを指します。
簡単にゆーとその二つが合わさった状態が、サルコペニア肥満というわけです。
もう少しイメージしやすく説明します。全く同じ身長・体重の方で、170㎝、80㎏の方が二人いたとします。BMIは27です。
1人は筋肉ムキムキのラグビー選手、もう一人は運動不足な会社員。一般的に考えると明らかにラグビー選手の方が筋肉量が多そうですよね。
太ももの筋肉量を比較したとします。
こんな感じで、身長と体重は同じだとしても、その体内の筋肉量は生活習慣によってかなり差が出ます。
BMI25以上の肥満、かつ筋肉量が明らかに少ない方、それがサルコペニア肥満です。そんなサルコペニア肥満についてまとめたいと思います。
サルコペニアは自体は以前別の記事にまとめましたので、興味ある方はそちらもどうぞ。
physicalkun.hatenablog.com
サルコペニア肥満の定義とは??
サルコペニア肥満の明確な定義はまだ定められてはいません。まだまだ研究中の段階なのです。
サルコペニアの診断では下腿周径などが使われましたが、肥満体型の方の下腿周径を測っても必ずしも筋肉量を正確に現しているとはゆえないんですよね。
サルコペニア肥満の研究で有名な先生は、BMIが25以上の方で、筋肉率が男性で27.3%、女性で22%に満たない人はサルコペニア肥満と判定することを提唱されています。
ただこの筋肉率とゆーのは、市販の体組成計で計測可能ですが、メーカーによっても多少の数字の誤差がありますし、体内の水分量によっても変化するので、そのあたりは事前に知っておく必要があります。
サルコペニア肥満の簡易診断
なかなか体組成計がないご家庭もあると思うので、動作から筋肉量を推定する方法も紹介されています。
①立った状態で靴下がはけるかどうか。
文章にしてみれば何でもないことですが、実際できるでしょうか??
立った状態で靴下をはくには、当然片足立ちになる必要があります。片足立ちの状態で、多少なりともバランスを取りながら、靴下をはけるかどうかですね。
この動作が難しい場合は、お尻周りの筋肉(中殿筋)などの筋肉量が低下している可能性があります。
②椅子に腰かけた状態から片足だけで立てるかどうか。
これも足の筋力が必要な動作です。もちろん椅子の高さによって立ちやすい・立ちにくいがあるので、腰かけた状態で股関節・膝関節が90度ずつ曲がる程度の椅子の高さで行ってみてください。
これで立てない場合は、太もも(大腿四頭筋)やお尻(大殿筋)などの筋肉量が低下しているかもしれません。
③片足立ちで60秒保持できるかどうか。
片足立ちで何も持たず60秒立ち続けれるかどうかですね。これは筋力だけでなくバランス能力も関係はしてきますが、これが難しい場合はやはりお尻まわりの筋肉が低下している可能性が考えられます。
以上、BMI25以上の方で、3つの動作のうち1つでもできなければサルコペニア肥満の可能性が考えられます。
サルコペニア肥満の影響
サルコペニア肥満は、通常のサルコペニアと比較しても身体機能の低下が見られやすいです。特に高齢者のサルコペニア肥満ではより顕著です。具体的には歩行速度の低下、歩行障害、階段昇降の困難などがいえます。
サルコペニアの筋肉量の低下に加えて、脂肪などのために体重も増加しているので、当然の結果といえば当然ですね。少ない筋肉で重たい体を動かす必要があると考えられるので。
また人の代謝の多くには筋肉が関わっており、代謝に重要な筋肉が少ないということは、代謝障害も考えられます。
代謝にもいろいろんなものがあり、基礎代謝なんて言葉はよく耳にしますね。人が生きていくうえで必要最低限消費されるエネルギーです。これも筋肉量によって差が出てきます。
間違ったダイエット法で、筋肉量が減ってしまい、かえって代謝が悪くなり、その後リバウンドするなんて話もあります。サルコペニア肥満の方は、すでに代謝が悪い状態のため、余計に肥満が進みやすい状態といえます。
また骨格筋は血中の糖を筋肉内に取り組み、血糖調節にも大きくかかわっています。なので、サルコペニア肥満の方は、糖尿病のリスクが2.8倍とされています。
基本的に、高齢者の方で肥満体型の方はサルコペニア肥満の可能性が高いといってもよいのではなかと思っています。
サルコペニア肥満に対する食事や運動の介入。
サルコペニア肥満に対しては、低エネルギー・高たんぱく、とくにBCAAなどのアミノ酸投与が有効とされています。運動に関しては、レジスタンストレーニングと有酸素トレーニングの併用が有効とされています。
栄養に関する具体的なプランとしては、必要エネルギーは1日の必要エネルギーの-200~750kcalを目安とします。たんぱく質は、体重あたり1.0~1.2kg/日。トレーニングを行っている場合は、1.2~1.5kg/日程度のたんぱく質摂取量でもよいそうです。
運動に関しては、どうしても肥満体型の方には有酸素運動による減量がイメージしやすいですよね。ただ、サルコペニア肥満の方に対しては、有酸素運動ではたしかに体脂肪の減少は得られるかもしれませんが、筋肉量の維持・改善が得られにくいです。
なので、有酸素運動だけでなくレジスタンストレーニングによる筋肉量の維持・改善を図っていく必要があります。レジスタンストレーニングを行うことで、成長ホルモンが分泌され、筋肉の合成を促進することができます。運動負荷としては、自覚的運動強度で「ややきつい」程度の運動でよいとされています。
減量しながら筋肉量を維持・改善させるには、栄養・運動で適切に介入していく必要があります。定期的に体重計測や周径・皮下脂肪厚を図ることで、適切な介入ができているのか確認しながら、経過を観察することも大事だと思います。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
リハ栄養での栄養状態の把握に身体計測のすすめ。
以前、リハ栄養の導入・実践についての記事を書かせてもらいました。その記事を、若林先生にSNSで紹介していただき、たくさんの方に読んでいただきました。
やはり、みなさん導入や具体的な実践で、色々試行錯誤されてるんですね。いやー、でも若林先生が私なんかの記事を読んでいただき、紹介までしてくださるなんて、、、ホントに光栄です。
今日は、前回の記事の中で身体計測について触れましたが、少し具体的にまとめてみようと思います。前回の記事はこれです。
physicalkun.hatenablog.com
リハ栄養を導入する上で、栄養状態をどのように把握するかは色々な方法があります。血液検査によるアルブミンなどの数値、MNAなどの問診による評価、この後に述べる身体計測など。どれもそれぞれにメリット・デメリットはあり、複数の方法による評価が望ましいと思っています。
当院では、リハスタッフが入院時に患者の身体計測(周径など)を行い、栄養状態・筋肉量の把握に努めています。
私が思う身体計測のメリットとしては、コストがかからず、侵襲もなく、慣れれば短時間で可能、また周径の変化を患者にフィードバックすることで、患者のモチベーションにもつながること、などを思っています。
デメリットとしては、検者によって誤差が出る可能性があるため、検者を統一するなどの配慮が必要な点。またある程度経験を重ねないと、検査結果に正確性が得られにくいといった点でしょうか。
コスト・侵襲がないので、どのタイミングでも評価可能なんですよね。この強みを活かすには、入院時の栄養状態の把握だけでなく、経過観察やアウトカム評価にも身体計測のデータが使えます。
では具体的な進呈計測の内容について説明していきます。
- 上腕周径(周囲長)(AC:Arm Circumference)
- 上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF:Triceps Skinfold)、上腕筋囲長(AMC:Arm Muscle Circumference)
- 下腿周径(CC:Calf Circumference)
- 腹囲周径
- 握力
- 体組成計
上腕周径(周囲長)(AC:Arm Circumference)
肩峰と肘頭を結ぶ中点位置の上腕の周径を計測することで、上腕の筋肉量を把握することができます。
計測は原則非利き手で行います。非利き手が麻痺側等であれば反対側で計測を行います。サルコペニアの診断基準としても使用されており、21㎝以下で陽性となります。
計測を行う上での注意点・コツとしては、周径を計測する際の肘関節の状態に注意することでしょうか。
まず中点を見つけるためには、肩峰と肘頭を触診する必要がありますが、肘頭は肘を曲げた状態の方が分かりやすいので、肘関節屈曲位で中点を定めると思います。
そのまま、屈曲位で計測すると多少なりとも上腕二頭筋の筋腹が隆起します。なので、中点を定める際は肘関節屈曲位、周径を計測する際は肘関節伸展位で行うよう注意しましょう。
また肩峰と上腕骨大結節とを触診で間違えやすいそうです。肩関節を内・外旋した際に動くようであればそれは肩峰でなく大結節を触診しています。
肘頭~大結節と肘頭~肩峰では微妙に中点が変化してくるので、当然上腕周径にも誤差が見られます。なので、もちろん肘頭~肩峰を正しく触診して中点を定めることが理想ですが、周径の精度を上げるコツとしては、中点を定めた際、肘頭から中点までの距離も記録しておくことを薦めています。
肘頭は骨突出が明らかなので、触診で間違うことはまずありません。肘頭から中点までの距離を記録しておけば、次回も同じポイントにおける上腕周径が計測できます。
毎回正しく肘頭~肩峰の中点を定める自信がない方は、このような方法でも良いかと思います。同じポイントで計測しないと、経過観察で得られるデータに信憑性がなくなりますからね。
上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF:Triceps Skinfold)、上腕筋囲長(AMC:Arm Muscle Circumference)
上腕三頭筋皮下脂肪厚を計測することで、脂肪量の把握ができます。
計測方法としては、上腕周径の際に定めた肘頭~肩峰の中点位置の上腕後面をキャリパー(アディポメーター)でつまみ、圧力線が一直線になった時点での目盛を記録します。
上腕周径と上腕三頭筋皮下脂肪厚の両方を測定すると、以下の計算式によって上腕筋囲長を求めることができます。
上腕筋囲長=上腕周径ー上腕三頭筋皮下脂肪厚×3.14
計算式だけみてもなかなかイメージできないと思うので、下の画像も参考にしてください。
当院ではエクセルに上腕周径と上腕三頭筋皮下脂肪厚を入力すると自動で上腕筋囲長が計算されるように設定しています。
入院時の計測を導入する際に、上腕周径だけ計測して筋肉量が分かればいいじゃないかとの意見もありました。入院経過の中で体重が増え、上腕周径が増加したとしても、皮下脂肪厚も計測しておくことで、狙い通り筋肉量が増えているのか、それとも脂肪量が増えてしまっているのか、見極めることができます。
また、肥満・サルコペニア肥満の方の減量に際しても、なるべく筋肉量を維持しながら、減量を行っていきたいので、上腕筋囲長で上腕の筋肉量を維持しながら、皮下脂肪厚が減っているのか確認ができます。その経過で食事摂取カロリーの検討の材料にもできます。
下腿周径(CC:Calf Circumference)
下腿周径もサルコペニアの診断基準にしようされています。下腿の最大膨隆部の周径を計測することで評価可能です。
下腿周径に関しては、片麻痺や頸部骨折などがある場合は、反対側の下肢で計測するようにされています。30㎝以下でサルコペニア陽性となります。
以上の項目が当院のリハビリテーション部で行っている身体計測です。
その他にも栄養状態に関する身体計測の項目がありますので、そちらも紹介とそれに関する私の意見も書いてみます。
腹囲周径
健康診断などでも計測される場合もあり、脂肪量の評価としてはかなりメジャーなものですね。メタボリックシンドロームの診断にも使用されています。
腹囲は脂肪量の評価として、計測が推奨されています。ただ、当院では基本的には計測していません。
腹囲計測もルーチンに入れることも考えたのですが、実際に、試しに腹囲計測の方法を指導した6名のスタッフそれぞれに患者の腹囲計測を行ってもらい、数日後に再度同じスタッフにそれぞれ同じ患者の腹囲を計測してもらいました。
結果として、1回目の数値と2回目の数値でかなり誤差が見られるとゆーことになりました。計測の時間も極力食事の時間帯から外したんですが、あきらかに数日でこんな差が出るはずないとゆー値もありました。
腹囲周径の測定誤差に関する文献もリサーチしましたが、検者内誤差が見られるとの文献も見つかりました。
確かに、メジャーの微妙な力加減で数値の変動がはすぐに見られますよね。おまけに高齢者の方の皮膚はたるんでることも多いですし、脳卒中の患者は腹部も低緊張なことも多く、そのあたりも計測の誤差につながりやすいのかもしれません。
なので、ルーチンに腹囲計測を入れたとしても、検者内誤差があることを考えると、本当にその数値を有効に使用できるとは思えなかったので、見送りました。
それでも、継続して計測することで精度は上がったかもしれませんが。
握力
握力は筋力の評価として、推奨されており、サルコペニアの診断基準にも使われています。
腹囲と同じく、当院では握力測定もルーチンには行っていません。
入院時に、栄養状態の把握を踏まえて握力測定することは、確かに簡易に行えるし有効かと思います。認知症患者や意識レベルの低い患者では使用できませんが。
ただ、経過観察やアウトカム評価の点から考えると、握力測定は私の中で少し疑問が残りました。
果たして、リハビリの中で握力に対してどれだけアプローチすることがあるだろうか、と思ったのです。
リハ栄養の考え方をざっくりゆーと、適切な栄養を取りながら適切なリハビリを行っていきましょうだと思っています。
私の病院は脳血管障害による片麻痺患者が多いですが、握力測定は当然非麻痺側で行います。もちろん、ADLで非麻痺側の握力が必要な場合も多々ありますが、セラピストとして非麻痺側の握力に積極的に介入する頻度はほとんどないと思います。
もちろん、私は理学療法士なので作業療法士は違う意見をお持ちかもしれませんが。
大腿骨頸部骨折の患者でも握力によほど上肢機能が低下してない限り、握力に直接的なアプローチはしません。平行棒や杖を使用する中で、経過としては握力が増加することはあると思います。
直接的なアプローチを行う頻度が少ない握力に対して定期的に評価して観察しても、リハ栄養の適切な栄養と運動にはあてはまらないと思いました。
あくまで、私個人の考えです。色々な計測データがあるに越したことはないと思います。
体組成計
これまで挙げた周径は検者による誤差の可能性や、握力は患者の努力量によっても変わる可能性があります。
客観的な数値としては、市販の体組成計やIn Bodyが使用しやすいかもしれません。最近は色々なメーカーが体組成計を発売しています。以前に比べると精度もかなり高いタイプも見受けられます。
体組成計は、体内の電気抵抗を利用して測定するものです。そのため、同じ人でも体内の水分量の変化によって、計測結果もばらつきが出てくるというデメリットがありました。最新機種では、その誤差もだんだんと少なくなってきているようです。
体組成計では、機種にもよりますが、脂肪量や除脂肪体重、筋肉量などいろいろなデータが分かります。このあたりは、後日詳しくまとめてみたいと思います。
デメリットは、立位が可能でないと計測できない機種が多いということでしょうか。一部では、臥位のまま計測可能な機種もありますが、かなり高価なものになります。今後、栄養状態の把握に体組成計が積極的に活用されるような流れが出てくれば、バリエーションも増えるかもしれませんね。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
福祉住環境コーディネーターの資格取得についての詳細。結構狙い目かもしれない。
2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会になった日本。今後も、高齢化率も上昇し、障害者も増加すると思われます。
高齢になったり、病気になっても、少しでも長く少しでも楽に自分の住み慣れた家で生活したい。誰しもが思うことですよね。
私は病院で働いていますが、患者さまのご自宅を訪問することがあります。退院後の生活をイメージして、手すりの設置などアドバイスさせていただいています。
このように高齢者や体が不自由な方の生活をサポートする仕事をされている方。
もしくは、今後自分の家を建てようとされている方。長く住みやすい家を作るヒントになるかもしれません。
そのような方に福祉住環境コーディネーターの資格取得がおすすめです。そんな福祉住環境コーディネーターに関しての情報や勉強方法についてまとめてみました。
1級、2級、3級の違いは?それぞれの合格率
福祉住環境コーディネーターは1級から3級の3段階に分かれており、1番難易度が高いのは1級となっています。
1級の試験はマークシート方式によるテストと記述式のテストがそれぞれ2時間ずつ設定されています。2016年の合格率は7.3%となっており、かなりの難関といえます。
記述式試験で、設計図の作成などが出題されるため建築分野の専門知識がないとなかなか厳しいと思われます。実際の受験者・合格者も一級建築士などの専門性の高い方が多いのではないでしょうか。
2級・3級の試験はマークシート方式のテストが2時間となっています。2016年の合格率はそれぞれ40%後半ですので、1級に比べると難易度はかなり見やすくはなります。
ではどちらを受験するかですよね、もちろん併願受験も可能ではありますが。3級は主に福祉と住環境に関する基礎知識を広く浅く確認するための試験であり、そこまで専門性が高いとは言えません。
2級になると、より住環境に関して踏み込んだ内容の試験内容となります。また住宅改修の支給申請書の作成が2級を持っていると可能となります。3級をもっていてもこの書類の作成はできません。
この資格を取る方が、住宅改修の支給申請書に携わるかは分かりませんが、2級が一定の知識のラインとされているような印象はありますので、2級の合格を目指した方が良いのかと思います。合格率も大きく変わりませんしね。
受験資格・受験費用
受験者資格に特に規定はないです。1級の受験に関しては2級合格者のみとされています。2級からの受験や2・3級の併願受験も可能です。
1級の受験費用が10.800円。2級が6.480円、3級が4.320円となっています。
取得者の割合
引用:福祉住環境コーディネーター検定試験® | 公式サイト
多いのは介護福祉士、ホームヘルパー、福祉用具専門相談員などが比較的目立ちます。その他には、リハビリ関係の職種やケアマネージャー、2級・木造建築士の方たちが後に続くような形ですね。
勉強方法
受験日は2・3級は7月と11月の年2回設けられています。1級に関しては11月の1回だけです。
福祉住環境コーディネーター検定試験の公式テキストが1~3級それぞれに対応する形で販売されています。
1級のテキストは5400円、2級のテキストが4500円、3級が2500円となっています。今はスマートフォンのアプリでも過去問を勉強できるものがあり、それらを利用しながら勉強するのもいいかもしれません。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
【要点まとめ】認知症について。4つの原因疾患に分類して、それぞれの特徴・症状を整理。
病院で働いていると、日常的に認知症とゆー言葉を使用しています。しかし、認知症の原因疾患はおよそ70種類があるとゆわれています。
今回は、認知症原因疾患で主なもの、アルツハイマー型認知症症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)の種類を4つに分類してまとめてみたいと思います。この4疾患が認知症患者の9割とゆわれているので、しっかり理解すれば臨床でもほぼ対応できると思います。
認知症の定義
そもそもの認知症の定義とは「いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、社会生活に支障を来すようになった状態」とされています。
その中心の症状は、記憶障害とそのほかの認知機能障害(失語、失行、失認、実行機能障害)とされています。
認知症それぞれのタイプによっても、どのような症状が現れやすいか病態が違っており、ひとくくりに認知症でまとまてしまうと、適切な対応・評価・治療ができない可能性もあります。
なので、それぞれの特徴をしっかりと抑えておく必要があるんです。
アルツハイマー型認知症
認知症と聞くと、アルツハイマー型認知症を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか??実際に、認知症の原因疾患のうち、アルツハイマー型認知症が一番多く、認知症の2/3を占めるとゆわれています。
アルツハイマー型認知症は、大脳皮質の神経細胞が編成・死亡・脱落し、脳が委縮していく疾患です。
特徴としては、病変は側頭葉(海馬周辺)から始まり、頭頂葉や前頭葉などへ次第に広がります。
病変が側頭葉にある場合は、記憶障害が主な症状となり、特に近時のエピソード記憶の障害や自伝的記憶の障害が顕著に現れます。
頭頂葉に進行すると、失行、失認、失計算、失読などの高次脳機能障害が見られるようになってきます。
さらに前頭葉に及ぶと、自発性の低下や計画を立て遂行する遂行機能にも障害が見られます。また人格変化や言動異常なども見られることがあります。
運動や感覚の中枢は変化が見られないため、病気が進行しても歩行などの基本動作は維持されていることが多いです。看護師からすると、逆に一人で動き回るため、苦労することも多いみたいですが。転倒のリスク管理はしっかりと考えておく必要がありますね。
脳血管性認知症
脳血管性認知症の原因は、脳梗塞や脳出血などが原因になります。梗塞や出血などにより脳に血流障害が起きると、脳の神経細胞が死滅し、急速に認知症や運動機能障害が出現します。
障害を受けた領域が小さい脳梗塞では認知症などの症状が見られないこともありますが、小さい梗塞を繰り返すことで徐々に認知症化する多発梗塞性認知症と呼ばれる病態もあります。
梗塞巣の分布が不均等で知的機能低下が一様ではなく、まだら状に障害されるためまだら認知症と呼んだりもします。
また一日の中でも、比較的状態が良いときや悪いときの差が見られることも特徴とされています。
感情失禁(突然泣いたり、怒ったりすること)も比較的見られやすく、そのような症状が見られても、病気による症状であると医療スタッフはもちろん、家族の方にも伝えて理解を促してあげる必要があります。
身体機能としては、多発性脳梗塞であれば、パーキンソン症候群が見られやすく、歩行の際小刻みになりやすいです。
レビー小体型認知症
脳全体にレビー小体と呼ばれるたんぱく質が沈着して起こる原因不明の病気です。
レビー小体型認知症の特徴として、幻視が挙げられます。初期には記憶障害より幻視が著明に現れます。
またリアリティのある幻視を見ることも特徴です。例えば、魚が宙に浮いてしゃべっているなどの非現実的な幻視ではなく、本来ここにいるはずのない親戚の子が座っているなど、ある程度現実味のある幻視が特徴です。
またレビー小体というたんぱく質はパーキンソン病の患者にも見られることが多く、レビー小体型認知症の患者においても経過の中でパーキンソン症候群の症状が見られることがあります。
前頭側頭葉型認知症
この病気では、アルツハイマー型認知症の脳全体の萎縮とは違い、前頭葉と側頭葉に限局した萎縮が見られるのが特徴です。
症状としては、記憶障害よりも人格変化・反社会的言動・衝動的行動などが顕著にみられます。
初期には、記憶障害が見られないため、認知症ではなく他の精神障害(統合失調症や双極性感情障害など)が疑われる場合もあります。
また他の認知症疾患に比べ、食行動異常が見られやすいという特徴もあります。食欲・嗜好・食習慣の変化などが見られやすいですが、特に早期にみられるものとして、食欲の亢進が見られやすいです。
嗜好の変化では甘いものを好む傾向があり、そのため体重増加や糖尿病などのリスクも考慮する必要があります。
以上、簡単に4つの認知症疾患をまとめました。認知症といっても、記憶障害だけではないということも分かっていただけたでしょうし、やはり疾患によって特徴があることもご理解いただけたと思います。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
呼吸療法認定士の過去問を紹介。受験の際の参考にしてください。
以前、別の記事で私が試験勉強で使っていた資料を掲載させていただきました。
physicalkun.hatenablog.com
今回は、試験のあと、帰りの新幹線で書き留めたものをWordに入力していたものがあったので、記事にさせていただきます。
呼吸療法認定士の試験問題は持ち帰りができないため、自己採点は自分の記憶が頼りです。
万が一、不合格だったときのことを考えて、少しでも問題を思い出して書き留めておくと、来年の役に立つかもしれません。合格間違いなしの方は、まどろっこしいことはせず祝杯をあげましょう!
さて、Wordのデータですが、あくまで自分の記憶で書き留めたものなので、100%正確なものではないと思うので、その点だけご了承ください。
問題文だけのものや、選択肢が抜けているものもたくさんありますが、こんなレベルの問題なんだな、ぐらいに思ってください。
実際の過去問
身体障害者認定について
①1.3.4級しかない
②自覚症状が考慮される
③他に障害があれば、1級あげれる
④4段階に分類されている
⑤?
気管について正しいもの
①門歯から咽頭までを上気道という。
②主気管支は右側長い。
③呼吸細気管支は終末細気管支よりも末梢にある。
④第4〜6胸椎で主気管支は分岐する。
⑤?
気管について正しいもの
①チューブは右気管支に入りやすい
②軟骨と腺毛の分布はほぼ一致している
③左右の肺葉の数について
④気管の数について
⑤?
気管について正しいもの
①肺動脈は気管支に併走する
②右肺の区域の数について
③④⑤?
A-aDO2の開大を伴わないもの
①死腔
②肺胞低換気
③シャント
④拡散障害
⑤換気血流不均等
肺機能検査
①BTPSについて
②STPDについて
③ATPSについて
1番高い酸素吸入濃度は?
①貯気バック付マスク
②ベンチュリーマスク
③酸素マスク
④⑤?
肺活量について正しいもの
①肺活量=一回換気量+予備吸気量+予備呼気量
肺気量について間違いは
①TLCはVC+FRC
②1秒率は加齢により低下
③RVは加齢により増加
④⑤?
気管切開の適応で間違いは?
①頸髄損傷
②喉頭浮腫
③両側声帯麻痺
④顔面外傷
⑤?
カフについて
①カフ容量が大きいチューブが使用される
②35以上になると血流が阻害される
③④⑤?
陽圧人工呼吸の影響
①心拍出量の増加
②中心静脈圧の上昇
③脳圧静脈圧
④尿量の減少
⑤?
ウィーニング中止の基準は?
①不整脈
②努力呼吸
③呼吸回数?
④⑤?
気道可逆性試験について間違いは
①β刺激薬を吸入し、前後の1秒率を使って改善率を計算する
②気管支ぜんそくの場合に行なう
③改善率の計算式
④⑤?
FRCの測定方法は?
①N2単一呼出曲線検査
②N2洗いだし開放回路法
③ヘリウム閉鎖回路法
④⑤?
N2単一呼出曲線で正しいもの
①100%酸素を最大吸気位まで吸入する
②第4相:肺底部の気道が閉塞する
③第1相:
④第2相:
⑤第3相:
コンプライアンスで間違い
①コンプライアンスの値が大きいのは肺が膨らみやすい
②コンプライアンスの値が小さいのは肺が膨らみにくい
③④⑤?
呼気筋で正しいもの
①内肋間筋
②外肋間筋
③横隔膜
④腹直筋
⑤胸鎖乳突筋
低酸素血症の原因で間違いは?
①死腔
②肺胞低換気
③シャント
④拡散障害
⑤換気血流不均等
フレイルチェストで誤っているもの
①機能的残気量の上昇
②コンプライアンスの減少
③換気量の減少
④シャントの増大
⑤低酸素血症
ARDSで間違いは?
①ALIはARDSが重症になったもの
②③④⑤?
問題文だけの過去問
選択肢までは思い出せなかったけど、問題文だけのものも一応書いときます。問題文にまつわる内容も認定テキストで押さえておくといいと思います。
抗コリン薬の副作用について
ステロイドの副作用について
吸入ステロイドについて
男性の門歯から気管分岐部までの長さは?
肺胞に届く粒子は?
口すぼめ呼吸について
新生児の血ガスについて
以上です。過去問がそのまま試験に出ることもあるので、少しでも役立ててください。
しかし、記事を作りながら思ったんですが、正直、ほとんど今の私は答えられませんね〜。また時間があるときに、久しぶりに認定テキスト見直してみようかなーと思いました。
リハ栄養を導入するとっかかりとしてNSTの活動に便乗。
以前に比べるとリハビリ関連の学術大会でも栄養状態に関する研究発表が見られる頻度が増えたような印象があります。リハ栄養とゆー言葉自体、セラピストだけでなく他職種にもかなり浸透してきたのかなーと思っています。
セラピストのみなさんの栄養状態に対する関心が、今後もどんどん広がっていけばいいなーと思います。今までと同じリハビリの運動プログラムでも、栄養状態が改善するだけで筋肉量の増加が期待でき、身体機能の向上の可能性が高くなるんですからね。
でも、組織としてリハ栄養をどのように病院に取り入れていくか、この点に関してはなかなか試行錯誤しているセラピスト、リハビリ部署が多いのではないでしょうか?
私自身も、今でも試行錯誤していますし、今後もどんどん改善するべき点は改善して、よりスムーズ・早期・オートマチックに患者様の栄養状態が改善できうる環境を整えていきたいと考えています。
本日は、当院でどのようにリハ栄養に取り組んでいるかをまとめてみたいと思います。
リハ栄養のはじまりっていつ??
そーいえばいつごろからリハ栄養の考えが出始めたのか、気になって調べてみました。
少なくとも、私は学生時代、栄養に関する講義は受けた記憶がありません。検査値としてアルブミンの見方ぐらいは勉強しましたが。
JSPEN(日本静脈経腸栄養学会)とゆー、とても大きな栄養関連の学会があります。そちらで初めてリハビリテーション栄養という特集が組まれたのが2011年。
JSPENが認定制度を行っているNST専門療法士という資格制度がありますが、その資格を理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の取得が可能になったのが、2010年。
それ以前から、セラピストの栄養状態への関与の有効性は発信されていたようですが、2010、2011年あたりがリハ栄養のはじまりと言えそうです。
私は、まだリハ栄養を導入して1年とちょっとしか経っておらず、あきらかにリハ栄養後発組だとはおもいますが、そんな私の病院でのリハ栄養の取り組みを紹介したいと思います。
NSTの活動に便乗
なかなかリハビリの部署単独でリハ栄養に関する取り組みを行っても、病院全体という組織に十分に浸透することは難しいと思います。リハ栄養といっても、当然、医師・看護師・栄養士・薬剤師などの理解・協力が必要な場面がありますからね。
なので、多くの病院が行っているように当院でもNST活動の一環としてリハ栄養の取り組みを行っています。
具体的には、患者の体重・BMI・体重減少率の経過のデータをリハ部署でも管理し、患者さまの経過や今後の活動性を踏まえて、現状の栄養状態・食事カロリーでよいのか検討しています。
病院全体としても、NST回診にあげる基準は設けていますが、その基準がリハ栄養の観点からゆーと、かなり低い基準なので、リハ部署独自に基準を設定し、その基準をもとにNST回診にあげるか判断をしています。
改善が必要と思われる患者がいた際は、月2回のNST回診の際にセラピストから発信してチーム内で検討し、主治医に提案する流れをとっています。
なかなか他部署から理解・協力が得られにくいケースもあるので、身体計測(上腕や下腿周径)なども入院時に評価し、NST回診にあげる際も再評価して、客観的な数字も一緒に伝えて、栄養状態の改善をお願いするようにしています。
またリハビリの内容を踏まえて活動係数を算出し、それをもとにTEE(全エネルギー消費量)を計算しています。TEEと現状の食事カロリーと照らし合わせて、今後の栄養状態の予後を検討しています。
消費エネルギー量に関しての記事は以下を参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com
NSTの問題点
どうしても、NSTの性質上しょうがないのですが、あくまでNSTからの提案という形で主治医にあがるんですよね。
もちろん、提案は提案ですし、主治医には主治医の考えがあるのは当たり前なのですが、Drによってはなかなかリハ栄養の視点でのカロリー変更や栄養補助食品の使用の協力が得られにくい場合もあります。
特に、糖尿病患者や肥満傾向にある患者ではなかなか折り合いが難しい印象です。もちろん、血糖コントロールや減量が大事なのも理解しているつもりです。
ただ、減量に関しては、あまりに急激な減量は筋肉量の減少にもつながりますし、サルコペニア肥満とゆー言葉も出てきています。
肥満の糖尿病患者は痩せれば痩せた分良いというような考えを持っているDrもいるような気がして、もう少し減量のペースにも配分していただきたいのが正直な感想です。
そのあたりも踏まえていただきながら、食事カロリーを検討してもらえるように、今後私も院内での研究発表や文献等を収集して、Drにサジェスチョンできるようにならなければと思っています。
栄養補助食品の負担
あとリハ栄養の取り組みでよく問題になるのが栄養補助食品(リハたいむゼリーなど)のお金の負担をどうするのか??だと思います。私も、リハ栄養の取り組みをスタートした際に、頭を悩ましたところですし、リハ栄養関連の講習会にいったときも、ときどきこの話題で盛り上がったりします。
病院の理解が得られているところでは、すべて病院の持ち出しにしているところもあります。持ち出しというのは、病院が負担しているということです。
病院によっては、患者に負担をお願いしているところもあり、このあたりは経営的な面にも影響しますので、一人のセラピストの意見だけでは困難です。
ただ、私の考えとしては病院が負担するだけの価値が、リハ栄養にはあると思っています。私は回復期病棟を持っている病院で働いていますが、積極的に栄養補助食品を使用し、より早期に身体機能の改善やFIMの改善が得られるのであれば、それ自体が病院の利益になると思っています。
どうしても、患者側に負担をお願いするとなれば金銭的に協力が得られない場合や、そもそも家族の理解が得られない場合なども出てくると思います。栄養補助食品の使用ができれば、もう少し良くなる可能性があることを思うと、もったいないなーという気がします。
今後、回復期リハ病棟でのアウトカムのFIMが厳しくなってくると、栄養補助食品の病院負担の話もスムーズになるのかなーとは思っています。熊本にある病院なんかではしっかりと効果も出していますもんね。
私自身の今後の課題
今は主にリハビリ部署がデータを管理しています。今後、この活動が病院に浸透すれば栄養科でのデータ管理を行ってもらいたいと思っています。結構、データ管理も大変なんですよね、少しでも業務の負担を減らしたいのです。
あとは、病院のNSTの基準を変更することも考えています。もう少し早期から栄養状態の悪化を見つけられるようにしたいですねー。今の基準はもうかなり低栄養状態になってしまっているので。
この基準の変更ができれば、リハからのアクションがなくても、栄養状態の改善が得られやすく、オートマチックに改善可能かもしれません。
あとは、食事の内容です。普通食、高血圧食、糖尿病食、心臓病食、、、いろいろな食事箋がありますが、全体的にたんぱく質量がもう少し上げれたらと思っています。
腎臓病食ではなかなか難しいでしょうが、せめて普通食だけでもどうにかしたいです。たんぱく質をあげるとなると、食材費も上がると思うので、病院の理解を得る必要があります。これも簡単ではないですが、頑張りたいと思います。
あとは、NST専門療法士の資格もやっぱり気になるんですよねー。ただの一セラピストの意見より、NST専門療法士としての意見であれば、もう少し周りへの影響力もあると思うので、、、。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
理学療法士の気になる残業・副業などの実態について。
最近、理学療法士に関するいろいろなデータを見る機会があったので、特に気になったところを私の個人的な感想も交えながらつらつら書いてみたいと思います。
みなさん自身や職場と比較してみると、またおもしろいかもしれません。
理学療法士の職業人としてのデータ
①理学療法士はやりがいのある仕事かどうか??
そう思うが55%、ややそう思うが30%でした。肯定的な意見が85%という結果で少し安心しました。私自身も、やりがいのある仕事だと思っています。
自分の努力が結果に結びつきやすく、ある程度の自由度もあることがおもしろい仕事だと思います。ただ、理学療法士だけでなくリハビリ全体に対する評価はもう少しされてもいいのではと思います。
まだまだ、理学療法士としての法的整備ができて50年ほどで、歴史は浅いですから、これからもどんどんEBを構築していく必要があるんでしょうね。
②理学療法士を一生続けたいか??
そう思うが42%、ややそう思うが26%でした。肯定的な意見が66%ほど。これを多いとするか少ないとするかは難しいところですねー。
残りの4割に関しては迷いがあるということで、気持ちは分からなくはありません。やはり、給与面での悩みが多いのだと思います。
私自身は続けたいと思いますが、もし子供が理学療法士になりたいといえば、、、強くは薦められないかもしれません、、、。
③ストレスの有無
とてもストレスを感じるが22%、ややストレスを感じるが53%。この数字だけ見ると、理学療法士はストレスを感じやすい仕事だと思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも医療にかかわらず働いている社会人に対してのアンケートでも、とてもストレスを感じるが29%、ややストレスを感じるが56%との結果もあり、特に理学療法士の仕事がストレスの強い仕事ではないということが分かります。
社会で働くこと自体かなりストレスなんですよね。自分だけがストレスを感じているわけではないと分かるだけで少し気が楽になるかもしれません。私は仕事が好きな部類に入るとは思いますが、好きだからストレスを感じないというわけではないですよね。
患者様のことで悩むと、夢にまで見たりすることもあります。年に1,2回は、患者さんが車いすから勝手に立ち上がって一人で歩いてる夢を見て、慌てて手を伸ばそうとして目が覚めることもあります。夢遊病に近いレベルかもしれません(笑)
④自分のことをどの程度幸せと感じているか?
幸せであるが27%、どちらかといえば幸せであるが53%。8割の方が肯定的な意見でした。
8割が幸せではあるが、この仕事を一生続けたいと思うのが6割ほど。幸せなことと、仕事を続けたいと思うかはイコールではないんですねー。仕事というものは難しいです。
業務に関するデータ(役職、残業、有休)
①職業上の地位
一般職員が60%、主任級が16%、科長級が9%のような結果になっています。病院によって役職の名称はそれぞれなので細かい内訳はあまり妥当性はないと思います。
役職の数は職場のセラピストの規模にもよるとは思います。ただ病院全体の性質上、なかなか一般企業に比べると役職が少ない病院が多いのかなーと思います。なので、どうしても役職に就ける人はごく一部になってしまいますよね。
②研究の時間(1週間平均)
0分が53%、1時間未満が27%、2時間未満が7%。ん~、まぁ現実はこんなもんですよね。どうしても、病院としては単位取得がメインになりますし、日々の業務をこなしながら、プラスアルファで研究までとなるとこのくらいの数字になると思います。
ただ、以前に比べると研究に割いている時間は少し増加しているらしいので、いい方向に向かっているのだと思います。
③残業時間(一カ月平均)
割合の多い順にいくと、0時間が26%、10~19時間が19%、20~29時間が9.7%、6~9時間が8.6%といった感じです。
この結果を見ると、なかなか2極化が進んでいるなーと感じますね。病院によっては、残業をしないように通達している職場もあるのかもしれませんが、私の病院では0時間は残念ながら難しいのかなと思います。0時間にする努力は管理職や個人レベルでもする必要があるとは思います。
④残業時間に対する手当の支給比率
100%が40%、全く支給されないが31%、75%程度支給が11%となっています。全く支給されないが31%もあることが一番の問題でしょうか?
私の病院でも、申請すれば100%支給はしますが、なかなか申請書が上がってこないのが問題だと感じています。申請書を上げにくいこともあるでしょうし、もともと残業代を払ってもらう習慣がなかった職場なので、その習慣がまだ払拭できていない感じです。
⑤有給休暇の取得日数(1年平均)
10~14日が24%、5日が11%、0日が8%、3日が8%といった感じです。全く取れない職場が8%ですか、有給の取得は労働者の権利なんですけどね~。
これも残業代と同じで、どうしても職場の雰囲気という暗黙の了解が存在しているところもあるのだと思います。私の職場では比較的有給消化率は高いのかなと感じています。
上司が積極的に使用すると、部下も使用しやすくなり、良い方向に進むと思うんですけどね。今は病院機能評価なんかでも有給の取得状況なんかも見るんじゃないのかなーと思ったりもするんですけどね。
副業、退職について
①主たる職場以外からの給与・報酬の有無
得ていないが73%、得ているが27%。みなさん、どうですか??アンケートの中でこの結果が一番私はびっくりしました。
およそ3割の方が職場以外からの収入があるらしいですよ。いわゆる副業ですね。
まぁ副業にもいろいろありますよね。休日に他の施設で非常勤として働いたり、中には理学療法士とは全く関係ない副業をされている方もいらっしゃるかもしれませんね。最近でゆーとブログによる収入ももしかしたらこの中に含まれているのかもしれません。
私の職場では就業規則で副業が禁止されていますが、もしかしたらもう古い考えなのかもしれませんね。確かに、最初この結果を見た時に思ったのは、「こんなに副業をしている人がいるのか!?」という驚きでした。
ただ、今この記事を書きながら改めて思ったことは、副業をする必要がある人がこれだけいるということが問題に感じました。
副業をしている方の中には、もちろん自分のキャリアアップや逆にキャリアを利用しての副業をしている方もいるのでしょうが、中にはメインのお給料だけでは十分といえないために副業をしている方もいるのかなと思います。
一般的な理学療法士のお給料では、子供を持ち、マイホームを建てるのは、難しいとまでは言えないかもしれませんが、容易なことではないと思います。そのためには、やはり副業の選択も必要なんですよね。
②退職回数
退職なしが50%、1回が28%、2回が12%、3回が6%といった感じです。んー、想像通りといえば想像通りでしょうか。
ちなみに退職理由は、今の職場を紹介されたが25%、職場に魅力がないが20%、地元に帰るためが20%、職場の人間関係が18%、給料が安いが11%でした。
もっと給料のことが上位に入ってくると思ったんですが、意外と低かったですね。紹介されることで退職する割合が高いというのは、やはり少なからずキャリアを積んだ人ということになるのでしょうか。
以上が簡単な要約になります。どうでしたでしょうか??意外とこのような数字で見ることはなかなかないので、少し新鮮だったのではないでしょうか。
改めて、ご自分や職場との比較の参考にしていただけたらと思います。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
理学療法士になるならおすすめは大学?専門学校?現役理学療法士の意見。
理学療法士になるには、大学で学ぶか、専門学校で学ぶかの2種類の選択肢があります。
短大もありますが、数が非常に少ないので今回は触れません。さらに専門学校では3年制にするか、4年制にするかの選択肢もあり、これから進路を考えている高校生は何を基準に選ぶか迷っているかもしれません。
私は理学療法士になって10年ほど経っていますが、その中で大学と専門学校の卒業後の影響がどのようにあるのか、感じたことをまとめてみたいと思います。
- 私自身のことから
- 理学療法士の最終学歴について。大学、専門学校の割合は??
- 大学と専門学校とで給料に差が出るのか??
- 昇給・出世に違いがあるか??
- 理学療法士としての能力の違いは??
- 卒業後のキャリアアップ
- 結局どっちがよいのか??
私自身のことから
まず始めに、私は4年制の専門学校を選択しました。そんな私の簡単な経歴から。
私自身、理学療法士として10年ほど同じ病院で働いており、一応役職をいただき、管理者兼理学療法士として働いています。業務の割合としては、管理者より、圧倒的に理学療法士としての現場での仕事の割合が多いです。
私自身、高校一年生ぐらいからぼんやりと理学療法士になることは考えていたと思います。リハビリ関係で働いている兄弟がいたので、割と早い段階から考えていました。
ただ、学校を選ぶ際は、大学であろうと専門学校であろうと、同じ理学療法士になるのであれば、どちらも変わりないじゃないか??と思っており、通学が楽な方を選びました。
実際に、通学は自転車で通える範囲でしたし、実家から通えたので親の負担も少なくできたと思っており、今でも特に後悔はしていません。
しいて言えば、専門学校では研究方法論を学ぶ機会がなかったので、その点は少し臨床に出て苦労しました。ただ、学会発表に興味がなければ特に支障はありません。
さてそんな私ですが、今後、進路に迷っている高校生の方に理学療法士の現状を伝えたいと思います。
理学療法士の最終学歴について。大学、専門学校の割合は??
実際のところ、大学・専門学校、どっちの卒業者が多いのか??
答えは専門学校卒業者が62%、大学卒業者が28%。その他には大学院まで進学したりもありますが、<専門学校卒業が圧倒的に多いです。
このデータでは専門学校卒業者のうち4年制と3年制を一緒にまとめて出しているようなので、細かい内訳までは分かりません。ただ、3年制の専門学校自体少なくなっているので、4年制の専門学校の割合が多いのかなと思います。
大学と専門学校とで給料に差が出るのか??
まずは答えから、私の病院では大学卒だろうと、専門学校卒だろうと給料は全く変わりません。
なぜか?大学卒の理学療法士と専門学校卒の理学療法士が、同じ条件で患者様にリハビリを行っても、病院に入るお金(診療報酬と言います)は同じだからです。
病院の利益は大学卒だろうと専門学校卒だろうと変わらないので、当然支払う給料に差をつける必要はありません。ですので、私の病院だけでなく、他の多くの病院で給料に差はないと思います。
一部の病院や、○○市民病院や○○医療センターなど、○○に地名が入るような公立病院では少し給料に差が出るようです。
公立病院ではなぜ給料に差が出るか??大学や専門学校を卒業すると、学位や称号をもらえます。
大学を卒業すると学士という学位が付与されます。専門学校を卒業すると、高度専門士や専門士などの称号が付与されます。
4年制の専門学校を卒業すると、学校のカリキュラムによるのかもしれませんが高度専門士を付与されると思います。3年制の学校では専門士となる感じです。また4年制でも夜間部などでは専門士となります。
この違いにより、公的病院では給料に差が出てくることがあります。学士と高度専門士は同じ扱いとされているので、高度専門士を付与される専門学校卒では大学卒と同じ給料と思われます。
ただ、普通に働いている分には、学士だろうが高度専門士だろうが専門士だろうが、全く気になりません。
実際に、理学療法士の中で一番多いのは、専門士で46%。続いて学士で25%、高度専門士7.7%といった形で続いていきます。
将来、公的病院で働き、公務員としての理学療法士になりたいのであれば、大学もしくは高度専門士が付与される専門学校を選ぶ方が良いかもしれませんね。
ただ、公的病院は人気が高いので、倍率が高く、比較的就職するのに高い壁があることも事実です。
昇給・出世に違いがあるか??
まず昇給から。さきほども説明したことも関係しますが、大学卒・専門学校卒だろうとリハビリによる診療報酬は変わりません。ですので、学校によって昇給額に差をつける必要はないので、昇給に差はありません。
出世に関して。これも大学卒、専門学校卒だろうと差はないと思います。現に、私の職場で役職についている職員は大学・専門学校卒で半々くらいです。
おまけに最近の風潮から、「出世して仕事の負担が増えるより、平社員で気楽に働ける方が良い」という考えの若者が増えているそうですし。
病院経営者からすると、やはり学歴ではなく、病院職員としてのスキルで評価することが多いと思います。ただ、卒業後に大学院で修士や博士までの学位を取得すると、経営者へのアピールにはなると思うので、出世の可能性は上がると思います。
理学療法士としての能力の違いは??
私の印象では、卒業して2~3年ぐらいは大学卒の職員の方が能力が高いのかなーとゆー印象はあります。その子の元々の能力の高さも関係しているとは思うんですが。
もちろん、専門学校卒であろうと、能力が高いなーと思う子はいますよ。なので、一概にどちらかが高いとは言い切れないのですが、私の漠然とした印象です。
ただ、2~3年過ぎると、その差はほとんど感じなくなります。要は、就職していかに自分で勉強できるかが、理学療法士の質につながっているからです。
ただ、大学の方が卒業後も、大学のサービス(リハビリに関する文献を調べたり)を引き続き使えることが多く、比較的勉強しやすい環境といえるかもしれません。
また大学の方が、図書が充実しているので調べ物もしやすいですね。専門学校でもそのあたりの卒業後のフォローに力を入れているところもありますが。
そのあたりの卒業後のフォローを選ぶ基準にしてもいいかもしれませんね。在学なんで長くて4年ですもんね。留年するともう少し長くなりますが、、、。理学療法士として生きていくのは何十年とあるので、在学期間より卒業後の期間のほうが圧倒的に多いのですから。
卒業後のキャリアアップ
理学療法士になったとしても、生涯勉強をしていく必要があります。今より少しでも患者様をよくするためにはね。
その中でキャリアアップという形で、先ほども少し書きましたが、大学院に進学する方もいらっしゃいます。より深く勉強・研究したいという方達です。
大学院に進学することで、修士や博士などの学位を付与されます。病院によっては、出世や給料に影響が出ることもあるかもしれません。
ただ大学院に進学するには、それまでに大学を卒業して学士を取得するか、専門学校を卒業して高度専門士の称号を取得をしていなければ、大学院への進学自体ができません。
将来的に大学院までの進学の可能性を残しておくなら、そこも考慮して学校を選ぶ必要があります。
ただ、大学院まで進学する割合は、本当にごく一部です。2~3%程度ぐらいでしょうか。なかなか理学療法士として働きながら、大学院に進学するというのは、肉体的にもハードだと思います。
もちろん、そういった方々の研究が現場で働いている私たちの基本となっていくので、頭が上がらないのですが。
結局どっちがよいのか??
タイトルでも述べたんですが、私としては大学に入れそうな学力があるのであれば、大学入学を目指した方が良いかと思っています。
給料は変わりませんが、大学の講師や教授の方がやはり影響力を持っていると思います。それは学生である私たちへの影響力もそうですし、卒業後感じるであろう理学療法士になってからの影響力もあります。
働き出して、こんなすごい先生に授業をしてもらっていたんだということがあると思います。教授になれるのは、やはりその分野でのエキスパートですから、卒業後もその分野での相談・アドバイスを受けれるかもしれないことは、非常に価値のあることだと思います。
さきほども述べましたが、在学期間なんて4年間です。卒業後の期間の方がはるかに長いんです。卒業後の学校との関わり・フォローも、学校選びの一つの目安にしてもいいかもしれません。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
セラピストマネージャーの詳細について。理学療法士の給料・キャリアアップの参考に。
セラピストマネージャーという認定制度があるのですが、回復期病院にお勤めでない方はあまり馴染みがないかもしれませんね。
病院に回復期病棟がある方や、回復期専従スタッフの方でほかのセラピストとキャリアで差をつけたいと考えている方、すでに管理職、もしくは将来的に管理職を目指してる方。
この記事がそういった方々の参考になればと思います。
セラピストマネージャーって何??
回復期リハビリテーション病棟の制度ができて、10年以上経過しました。病棟数は増加傾向にあり、すでに回復期リハ病棟に従事しているPT・OT・STの数は、約1万5千人を超えています。
その現状を踏まえて、回復期リハビリテーション病棟協会が平成23年より回復期セラピストマネージャーコースを開講しています。
目的としては、
質の高いリハビリテーションの提供は当然のこと、人的・環境的リスクに関するリスク管理及び他職種との協働。さらに病棟運営に寄与し組織管理を実践できる回復期リハビリテーション病棟におけるセラピストマネージャーとしてのセラピストを育成すること
だそうです。
単なる一セラピストとしての治療技術どうこうでなく、回復期リハビリテーション病棟をどのようにマネジメントするかの視点を学ぶということです。難しそうですが、確実に自分のキャリアアップにつながるでしょうねー。
視点としてはほぼ管理職ですよね。なので、将来管理職を狙っている方にはおすすめの資格です。
取得条件
応募要件は
①リハビリテーション病棟協会会員施設に所属していること。
②PT・OT・ST協会のいずれかに所属していること
③療法士免許取得後実務経験8年以上
④回復期リハビリテーション病棟実務経験1年以上
⑤施設長、または上司の推薦書があること
⑥回復期リハビリテーション病棟の質向上に強い意志を有すること
※申し込みの際に、申請書にセラピストマネージャー取得に対する意気込みを書く必要があります。
⑦全研修日程(6日間×3回)を通して参加できること。
以上の7点が応募要件になります
推薦書には、セラピストマネージャー取得後、取得者をどのように活用するかなども書く必要があります。
合格率は??試験の内容は??
公式HPやインターネット上に合格率や試験の詳細の情報は書かれていませんでした。
講習会の全日程終了後に試験自体はあるようです。どのような試験なのかは分かりませんが。ただ試験結果の点数が本人だけでなく、推薦者にも連絡があるようで、生半可なことはできませんね、、。
セラピストマネージャーの現状は??
平成23年から認定制度をスタートしました。認定講習会の募集人数は120名となっています。当初から毎年この人数で募集していたかは分かりません。
仮に毎年この人数で募集していて、全員合格したとすると600名のセラピストマネージャーが全国にいることになります。全国の回復期病棟施設からするとまだまだ、絶対数の不足ですね。
回復期病棟におけるセラピストマネージャーの配置状況は、全体で26.4%で配置ありだそうです。4施設うち1施設の回復期病棟には配置されている計算ですねー。この配置ありが、病棟に専従なのか、病院に在籍しているのかは分かりませんが。
入院料ごとの配置率は回リハ入院料1が32.4%、回リハ入院料2が19.5%、回リハ入院料3が9.5%です。
思ったより、配置率が高いのでびっくりしました。配置したところで、診療報酬上の加算はないんですが、回復期病棟に力を入れている施設では病院のバックアップ等も得られやすいのかもしれませんね。
資格取得・維持に必要な費用は??
さていよいよ費用のお話になります。私も取得を考えたことがありましたが、この金額を見て、到底個人レベルでの取得は無理だと思いました。施設のバックアップがなければ、、、、
その額、20万円!!高いのは高いですが、それだけのブランド力はあると思います。高いですが、、、
費用には18 日間の研修受講料・テキスト代・お弁当代・交流会費、認定授与式祝賀会代を含まれているそうです。祝賀会なんかは、豪勢な食事会のような感じで、そこでさらなる情報交換や横のつながりができそうです。
今後も、おそらく毎年募集人数上限に達すると思うので120名ずつ増えていくのでしょうが、セラピストマネージャーの具体的な付加価値を見いだせるかが大事になってくるでしょうね。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。
NSTに関するまとめ。加算や現状、今後の流れ。
リハビリでは、近年リハ栄養という考え方が徐々に広がっています。栄養状態に関しては、以前から栄養サポートチーム、いわゆるNST(Nutrition Support Team)活動が行われていました。
みなさんの病院でもNST活動はされているでしょうか?もしされているのでしたら、有効に活動できているでしょうか?
本日はNSTの活動についてまとめ、今後の参考になればと思います。
NSTのはじまり
今でこそNSTといえば、患者の栄養状態ということにすぐ結びつくほど浸透していますが、いつごろから普及し始めたのでしょうか?
2001年に、日本静脈経腸栄養学会が主導のもと、全科型栄養サポートチーム導入の有用性を啓発し、その設立・運営を支援するNSTプロジェクトを立ち上げ、活動を開始したそうです。
開始して、15年ほどでここまで普及するとはすごいですね。潜在的に、このような活動の必要性を現場では感じていたんでしょうか?
私が、病院に就職したときはすでにNST活動が当たり前のようにあったので、それ以前のことは想像できませんが。
栄養管理実施加算、NST加算
もちろん、NSTの普及にはNST自体の必要性や有効性が関わっているとは思いますが、やはり診療報酬上の加算も大きかったかもしれませんね。
2006年に、栄養管理実施加算なるものが新設されました。管理栄養士、医師、看護師、薬剤師などが、入院患者ごとに栄養状態を評価し、栄養管理を行うことで加算がとれるようになりました。
その後、全国の97%の施設で算定されるようになったため、入院基本料に包括されました。この流れを見ると、患者の栄養管理は特別なものではなく、ルーチンに行われるべきものになったといえます。
2010年には、栄養サポートチーム(NST)加算が新設されました。
当初は、急性期病院だけでの加算でしたが、2012年の診療報酬改定により、慢性期病院でも算定が可能となっています。
まず急性期病院で栄養不良の患者の発生を食い止めようとの考えだったのかもしれませんが、やはりそれに続く慢性期病院でも引き続きの積極的な栄養管理は求められますよね。
NST加算の現状は??
ではNST加算の現状はどんな感じになっているのでしょうか??
2014年のデータでは、加算算定施設は1119施設となっています。加算が新設された2010年の加算算定施設が500施設程度なので、およそ2倍になっています。
JSPENに登録されているNST稼働認定施設数は2014年で、1487施設となっています。仮に、加算算定施設の1119施設がすべてJSPENにも登録している施設だとしても、算定施設の割合は75%ほどとゆーことになります。
もちろん、病院の特色や病床数などの規模によっても算定を行わない選択をする施設もあると思います。その理由は、NST加算の算定要件のハードルの高さと診療報酬が釣り合っていないためだと思います。
算定要件として、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士が栄養管理に係る所定の研修を修了する必要があります。医師は10時間以上、その他の職種は40時間以上の研修を修了する必要があります。
まず、この4職種すべてが研修を修了しているというのも、ややハードルが高いように思います。まぁこれは時間をかければ超えれるハードルではあります。この職種に理学療法士が含まれていないのが残念です、、、
次が問題ですね、この4職種のうち一人は専従でなければなりません。専従というのは、NSTに関わる業務しか行えないということになります。
多くの施設がこの専従には管理栄養士を設定していることが多いようです。管理栄養士の年収が4職種の中では一番低い場合が多く、平均年収が350万程度とされています。
NST加算は患者一人につき週1回200点を算定可能です。管理栄養士の年収を月で割ると、一カ月30万円程度になります。30万円の給与をNST加算で捻出しようと思うと月に150回算定する必要があります。
加算対象の患者の条件として
①栄養管理計画の策定に係る栄養スクリーニングの結果、血中アルブミン値が3.0g/dl以下であって、栄養障害を有すると判定された患者
②経口摂取又は経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者
③経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者
④栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者
との条件が設定されています。
はたして中・小規模の病院で月にこのような患者で150回算定できるでしょうか??そして本当に週一回の算定が必要な患者ばかりなのでしょうか??
このあたりは、モラルハザードとしても問題視されています。
また回診やカンファレンスには専従者だけでなく、他の職種の専任者も同行する必要があり、これも拘束時間が増えるためハードルになってしまいます。
NSTの課題
NST加算についての内容ばかりになってしまいました。一般的なNST活動についての課題をまとめてみます。
NST回診の意見はあくまで提案という形で主治医にあげることが多いと思います。ですので、やはり最終的な決定は主治医が行うので、100%NST回診の意見が実行されるわけではありません。
また、NST活動を積極的に行っていても、中心となる医師が異動することで、活動力の低下が見られることもよくあります。
あとは、先ほどもNST加算の話をしましたが、加算をとること自体にも高いハードルがありますし、取れたとしても施設に収益が出ることはなかなか容易なことではありません。
アウトカム評価やエビデンスが不十分なため、今後も構築していく必要があります。
NSTの今後
加算要件や報酬の見直しがなされることを期待はしますが、NST活動による病院の収益が直接的な診療報酬だけでなく、適正な栄養療法により抗生剤使用の減少や、早期離床、在院日数の短縮など、他のメリットに関してもしっかりとしたエビデンスが構築されていく必要があります。
そうすれば、目先の利益だけではなく、NST加算に取り組める可能性もありますね。
また、入院中だけでなく、退院後の地域での生活においても適切な栄養管理が行えるような、広い視野でのNST活動が行えるような枠組みができればおもしろいなーと思います。
在宅生活中の栄養状態が良ければ、もし入院することになったとしても予後は良い方に行くのではないでしょうか?リハビリでもやせ細った患者が入院してくるより、栄養状態が良い方がリハビリの進みも良好ですよね。
そのあたりも踏まえて、地域でのNST活動なるものができればいいなと思います。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。