リハスタ

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リハ栄養を踏まえたエネルギー消費量の計算。注意すべき運動負荷。

本日は回復期リハビリ病棟に入院されている患者様のエネルギー消費量の計算方法についてまとめたいと思います。

以前の記事でも触れましたが、回復期リハビリ病棟では1日に最大で3時間リハビリをすることが可能です。急性期病院に比べると、リハビリの運動強度も上がっていることも考えられます。


運動時間・運動強度が増えれば、当然消費エネルギーも増えるため、その点を踏まえた栄養管理が必要となってくるわけですね。
なので、急性期病院での投与カロリーをそのまま回復期リハビリ病棟患者に使用していれば、体重減少につながり、低栄養状態となる危険があります。

基礎エネルギー消費量(BEE)

まずは基礎エネルギー消費量(BEE:Basal Energy Expenditure )について説明していきます。


基礎エネルギー消費量(BEE)とは、ヒトがじっと寝ているだけでも消費するエネルギー量のことをいい、具体的には心臓・肺の活動など、必要最低限のエネルギーのことをいいます。基礎代謝量ともゆったりします。

では、どうやって求めるかですが、身長・体重・年齢を用いたハリスベネディクト式がよく用いられます。
男性=66.47+13.75w+5.0h-6.76a
女性=655.1+9.56w+1.85h-4.68a
(w:体重kg、h:身長cm、a:年齢)
で計算可能です。

全エネルギー消費量(TEE)

基礎エネルギー消費量に、あとは実際にリハビリ等の運動で消費したエネルギー量を合算したものが、全エネルギー消費量(TEE:Total Energy Expenditure)となるわけです。
実際の患者様の食事のカロリーがこの全エネルギー消費量と同量であれば現状の栄養状態の維持が可能です。

すでに低栄養状態にある患者に全エネルギー消費量と同じ投与カロリーでは栄養状態の改善は得られないので、毎日全エネルギー消費量に加えて+200~750kcal多めに摂取することを、1ヶ月間継続すると体重が1㎏増加するとゆわれています。




エネルギー消費量の計算方法


リハビリでのエネルギー消費量の計算にはいくつか方法があるので紹介していきます。

まずはメッツ(METs:Metabolic equivalents)を使用する方法があります。メッツとは運動の強さを示す単位です。安静臥位を1メッツと規定した際、目的の動作が何倍の運動量になるかを示します。

以下に簡単な身体活動とそれに応じたメッツを紹介します。文献によって多少差が見られますが。

メッツ 身体活動
1.0 横になって静かにテレビを見る
1.3 座って静かにする、立位で静かにする
1.5 座位で会話する、食事する
1.8 トイレ
2.0 整容動作、家の中を歩く、シャワーを浴びる
3.0 歩行(4.0km/時間、平らで固い地面)
3.5 レジスタンス運動(8~15回繰り返えし)、階段を降りる

どうでしょうか、イメージがつかめたようなつかめないような、、、。ちなみに階段をおりるは3.5ですが、上がるになると8メッツになります。
もっと詳細に動作を分類したものも紹介されていますので、気になる方は調べてみて下さい。

一般的にベッドサイドでのリハビリは1~3メッツ程度、機能訓練室でのリハは1.5~6メッツとゆわれています。

エネルギー消費量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×時間(hr)で消費量の計算が可能です。
なので体重50kgの患者様が、一日3時間リハビリをしたとして、その運動強度の平均が3メッツと考えた時は、473kcalをリハビリで消費したということになります。
よって全エネルギー消費量=BEE+473と考えられます。

活動係数とストレス係数


次に活動係数やストレス係数を用いた計算方法を紹介します。当院ではこちらの方法を採用しており、他の病院の取り組みを見てもこちらを使用されている事が多いみたいです。

計算式は
TEE=BEE×活動係数×ストレス係数

活動係数の例
寝たきり状態(意識障害):1.0
寝たきり状態(覚醒状態):1.1
ベッド上安静      :1.2
ベッドサイドリハ    :1.2~1.4
ベッド外活動      :1.3
機能訓練室でのリハ   :1.3~2.0

機能訓練室にて2~3メッツ程度のリハを20分で1.3、1時間以上で1.3~1.7、2時間以上で1.5~2.0の活動係数に換算します。

ストレス係数の例
飢餓状態  :0.6~1.0
術後3日間  :1.1~1.8(侵襲度による)
骨折    :1.1~1.3
褥瘡    :1.1~1.6
感染症   :1.1~1.5

当院は回復期なのでほとんどストレス係数については考慮していません。

活動係数についても文献によって微妙に数字が前後していることや、あくまでセラピストの主観で決めるので客観性に欠ける点が問題かなと考えています。

以前、リハ栄養で著名な若林先生のお話を聞く機会がありましたが、定期的に栄養状態のモニタリングをして投与カロリーと全エネルギー消費量とのバランスを見ていく必要があると話されていました。


今後、活動係数の統一や、新たに客観的なエネルギー消費量の計算方法の開発が期待されますね。

本日も最後までお付き合いありがとうございました。