リハスタ

   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

低栄養状態の患者をリハビリする際の運動負荷量

本日は低栄養状態の患者のリハビリをする際の注意点をまとめたいと思います。


リハ栄養に特に興味のない方もいらっしゃるとは思いますが、少なくともこの記事で紹介することは抑えておいて欲しいです。


なぜなら、一生懸命患者を良くするためにリハビリを行なっても、逆に患者を悪くする可能性があるからです。

低栄養状態だとなぜ悪い??


低栄養の定義に関しては別の記事でまとめさせていただきました。興味のある方は一読お願いします。
physicalkun.hatenablog.com



では、低栄養状態だとなぜ悪いのでしょうか??


疲れやすそうだから?筋肉がつきにくそうだから?それだけではないんですよね。


低栄養状態の患者に間違った考えでリハビリを行なってしまうと、逆に悪くしてしまう可能性があります。


運動にはエネルギーが必要


当たり前のことなんですが、大事なことです。患者が低栄養状態にあるということは、食事等から得ているエネルギーより、日々の生活動作・リハビリと病気の創傷治癒などで消費しているエネルギーの方が多く消費されているということになります。


分かりやすくエネルギーを収入と、支出に例えて考えてみましょう。食事が収入、運動や創傷治癒のエネルギーが支出です。


健康な方であれば、収入と支出はほぼイコールの生活です。最近太ってきたなーという方は、支出より収入が増えている状態と理解できます。


低栄養状態の方は、収入より支出が多くなっている赤字の状態です。その状態で、積極的な筋力増強運動などを行うと、支出(運動によるエネルギー)が増えてさらに赤字が大きくなります。


その場合、私たちはどーするでしょうか。貯金を切り崩しますよね。ヒトの体内でのエネルギーの貯金にあたるものは、筋肉になるんです。貯金である筋肉を分解することで、なんとか支出のエネルギーを捻出しようとするんですね。


筋肉を増強するためのリハビリが、かえって筋肉を分解させてしまうことがあるということ。この点をしっかり理解しておかないと、専門職とはいえないのではないでしょうか??




この患者は積極的に行っていいのか??


ではどのように判断してリハビリの負荷を決めればいいのかという話になります。


BMI22以上 BMI18.5-22 BMI18.5未満
アルブミン3.6以上 機能改善 栄養・機能改善 栄養改善・機能維持
アルブミン3.0-3.5 栄養・機能改善 栄養・機能改善 栄養改善・機能維持
アルブミン2.9以下 栄養改善・機能維持 栄養改善・機能維持 栄養改善・機能維持


アルブミンとBMIの関係から運動負荷を判断できます。ここでゆー機能維持とは、関節可動域運動や筋力維持のための運動(最大筋力の20~30%負荷)、ADL訓練などのことを指します。


ただ、アルブミンはリアルタイムの栄養状態を反映せず、採血日の3週間前の栄養状態を反映する数値だということを知っておいてください。


なので、アルブミンの値も参考にはしますが、今現在、患者がどの程度の食事を摂取しているのか。食事箋の情報ではなく、本当に食べれている量の確認。それとリハビリの運動量との調節が必要となってきます。


栄養状態が回復してから積極的なリハビリを行うのではなく、今後、この患者が栄養状態が改善してくると判断される時点で筋力増強を行っていく必要があります。


そのためには、病棟看護師や栄養士と相談しながら栄養状態を把握していく必要がありますね。リハ栄養も他職種連携が重要です。


患者の栄養状態をしっかりと評価して、より効果的なリハビリが行えるよう、もっとリハ栄養が普及していくことを期待しています。



本日も最後までお付き合いありがとうございました。