リハスタ

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呼吸リハの必要性と今後の展望

本日は呼吸リハに関するエビデンス等と必要性についてまとめていきます。

日本人死亡原因疾患


呼吸リハと聞いて皆さんは、対象疾患をどのようにイメージされるでしょうか??


一番浮かびやすいのはやはりCOPD(慢性閉塞性肺疾患)でしょうか?私も学生のときはそうだったと思います。ただ、最近は呼吸器疾患がない方でも、呼吸リハの視点の必要性を強く感じています。


少し話は変わりますが、日本人の疾患別の死亡順位に触れてみたいと思います。



1位は悪性新生物(がん)。以前に比べると早期発見が可能となったり、治療薬の進歩も見られているとは思いますが、。全体の30%を占めています。


2位は心疾患。心筋梗塞など心臓に関する病気も、15%ほどとなっています。


3位は、、、肺炎なんですね。平成22年までは脳血管疾患(脳梗塞など)が3位だったんですが、平成23年度以降はずっと肺炎が3位になっています。ご存じだったでしょうか??



脳血管疾患疾患に関しては、t-PAなどの血栓溶解剤や血管内治療の進歩などによる救命率の改善、血圧コントロールによる脳出血患者の減少などが関係して死亡順位が低下していると考えられます。


肺炎に関しては、脳血管疾患発症後30カ月以内に22%が肺炎を発症するなどの研究もあります。


今後も、脳血管疾患で一命をとりとめた方が、少なからず嚥下障害の残存や活動性の低下などにより、肺炎をきたす可能性が増えてくるのではと思っています。


肺炎や肺炎予防に対しての理学療法士の関わり方も、もっと積極的に行う必要性を感じています。

呼吸リハの重要性


私は呼吸療法認定士の資格を取得して7.8年経っているでしょうか。当時も今も、当院では呼吸器内科自体は存在しておらず、当然呼吸器リハでの算定は行っていません。


なので、なぜ私が呼吸療法認定士の資格を取得したのか、疑問に思っていたスタッフもいたと思います。


当時は、私もまだまだ若く尖っていた時期なので、そんなスタッフに理由を聞かれても、「実習中の尊敬していたバイザーが持っていて、僕も取ってみました」、、、なんて返答をしていました。まぁこれも事実は事実なんですが。


もちろん、呼吸内科がなくとも、その必要性を理解してくれていた先輩もいましたが。


脳血管疾患でも、喀痰量が多い方はたくさんいらっしゃいます。総じて咳嗽力も弱いため、十分な喀出が難しいです。


気切をされて来る方も中にはいらっしゃいます。カニューレの知識も要求されますし、痰の吸引もリハビリでも必要に応じて行わなければなりません。


胃瘻造設にあたっても、少なからず腹腔に侵襲が加わるので、呼吸機能にも影響を与えます。また内視鏡も使用するため唾液の誤嚥による肺炎も合併症のリスクとして挙げられています。


こうして考えると、呼吸器疾患だけに呼吸リハが必要ではないことが、分かっていただけると思います。


ちなみに呼吸療法認定士を取ったからといって、業務範囲が増えるわけではありません。あくまで、呼吸に関する知識があるという認定程度です。


独学で呼吸について勉強するより、しっかりとカリキュラムを組んで勉強できることと、資格取得という分かりやすいモチベーションのために呼吸療法認定士の資格を取りました。


あとは、資格を持っていることで、看護師に勉強会を行ったり、リハとしての意見も発信しやすさは感じられました。




肺炎に関するエビデンス


肺炎に関するリハビリのエビデンスを紹介します。


肺炎発症後、3日以内に理学療法がスタートしたグループと4日以降にスタートしたグループでは入院30日以内の院内死亡率に差が見られたそうです。


安易な安静は予後に影響するということですね。もちろん、病期をしっかりと見極める必要がありますが。


少なくとも、背臥位よりギャッジアップ座位の方が、気管支内の繊毛活動は促進され排痰には有効です。そして、重力の影響により背臥位で同じ姿勢では肺の背面に痰が貯留してしまいますね。


別の研究では、入院後2日以内に経口摂取スタートしたグループと3日以降にスタートしたグループでは、退院時3食経口摂取獲得群に14%の差が見られたそうです。この経口摂取は、ゼリーのような間食でも良いそうです。


とりあえず絶食にすることは経口摂取獲得の予後に影響します。しっかりと嚥下機能を評価しなければなりませんね。嚥下機能のサルコペニアとゆー考え方もあるそうです。少ない量でもいいので、経口摂取することが重要です。


肺炎患者にどのように関わるか。ベッド上でROM、キッキングで終わってしまっていいのか。少し考えるきっかけになれば幸いです。


安易な安静・絶食はリハビリだけでは変えれませんが、リハからも提言すれば変化はみられることだと思っています。

本日も最後までお付き合いありがとうございました。