長下肢装具の使用に関して知るべきメリットや値段・負担について
本日は長下肢装具についてまとめたいと思います。
先日、とある研修会(触診に関する)に参加した時の話ですが。少し雑談的な話のときに、講師の方が長下肢装具の必要性を真っ向から否定されていました。
経験年数は30年近い方だと思うんですが、今まで一度も使ったことがないし、使おうとも思わないと。急性期病院にお勤めの方です。
もちろん、セラピストによってアプローチの方法は違いますが、私としては少しびっくりしました。
長下肢装具に関するエビデンスは、RCTでこそまだ認められてはいませんが。ただ色々な方の研究によって、筋活動のデータやFIM、在宅復帰率との相関に関する研究発表がされています。
それを、研修の場であのように否定する、、、。やはり少し考えが古いと言わざるを得ないと思います。
私の病院(回復期)では、病院の備品としても長下肢装具を置いていますし、中には患者さまに購入してもらうケースもあります。
みなさんの病院では、長下肢装具積極的に使われているでしょうか?
脳卒中ガイドラインと長下肢装具
脳卒中ガイドラインでは、発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが強く勧められる(グレードA)。その内容には、早期座位・立位、装具を用いた早期歩行訓練、摂食・嚥下訓練、セルフケア訓練などが含まれる。
具体的な装具の名称は書かれてはいませんが、早期に立位・歩行をするためには長下肢装具が必要な患者様もいらっしゃいます。
起立─着席訓練や歩行訓練などの下肢訓練の量を多くすることは、歩行能力の改善のために強く勧められる(グレードA)。
これに関しても同じことがいえますね。
短下肢装具に関しては、エビデンスは十分に構築されています。長下肢装具に関しても今後エビデンスの構築が期待されますね。
長下肢装具のメリット
メリットはあげればきりがありません。早期からの立位・歩行練習による廃用予防や、良アライメントでの動作練習が可能です。
また、2動作前型歩行が可能となり、立脚後期の股関節伸展が得られます。半球間抑制の観点からも長下肢装具を使用することでフリーハンド歩行が可能となり、理論的に有効とされています。
高次脳の面でも、半側空間無視や身体失認、プッシャー症候群などに対しての有効性の研究も見られます。
他にも細かい点を上げればまだまだあるでしょう。
購入にあたっての費用
膝継手や足継手に何を選択するかで、値段も変わってはきますが、だいたい13万円前後といったところでしょうか??
装具屋さんに一括でお支払いしていただく必要があるので、高額なものではあります。
ただ、高額療養費制度に合算が可能であったりするので、後々返金が得られます。
最終的な自己負担額は、個人の所得にもよりますが、多くの方は数千円程度になります。
なので、最初の一括払いが可能であれば、最終的な患者家族の負担はそこまで大きなものではありません。
では、国民の医療費全体の視野で考えた時はどうなのか??13万もかけて作ったら、膨れ続けている医療費が余計悪化するじゃないか!?
私はこう考えています。回復期病棟の入院料が施設基準によって違いますが、入院料2だと仮定すると1日18.000円です。
そこに1日9単位リハビリをすると22.050円かかります。つまり、1日入院すると4万円かかります。ほかにもベッド、食事代等ありますが。
となると、長下肢装具を作製して、より早期に機能回復が得られ入院期間が4日短縮されれば、医療費の面ではとんとんです。
それだけの可能性は長下肢装具は十分秘めていると思います。
また、今後よりシビアに求められる回復期病棟でのFIM利得。早期退院、早期機能回復を達成するには、長下肢装具のメリットは大きいと考えています。
なかなかいきなり患者様に購入を進めるのは難しいでしょうし、病院の備品としても購入が難しい場合もあると思います。
そんな場合には、大手の装具業者が長下肢装具のレンタルをしているところもあります。
3ヶ月で15000円だったと思います、確か。ある程度のサイズ調整は可能なので、そーゆーサービスの利用からでもいいのではと思います。
私自身、以前は長下肢装具に関して否定的な考えを持っていました。費用の面や膝の学習がえられないなど。
しかし、偏見を捨ててしっかり勉強するとメリットが大きい点や、費用の面でも公的補助がうけれるなど、勉強不足を感じました。
当院でもレンタルサービスから始め、今では病院に備品としておいています。同様の流れの病院が多いように聞いています。中には患者様の寄贈品を使用していたりもするそうですね。
もしまだ長下肢装具が選択肢に全くない病院があれば、すこし文献検索をおすすめします。もしかしたら新たな発見があるかもしれませんよ。
本日も最後までお付き合いありがとうございました。