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脳卒中後のうつ(PSD)。好発部位や治療法などについて。

本日は脳卒中後のうつ(Post-Stroke Depression:PSD)についてまとめたいと思います。


PSDの言葉自体聞いたことがない方も、いらっしゃるかもしれません。また、言葉自体知っていたとしても、誤解されている方もいらっしゃるかもしれません。ぜひ、最後まで読んでみてください。

PSDとは??


脳卒中発症後のうつをPSDと呼びます。経験的にも意欲の低下した脳卒中高齢者は思い当たるのではないでしょうか??


私自身、そのような患者様を担当しても、脳卒中による後遺症で体が不自由になったために、二次的にうつ状態になったのだと解釈していました。しかし、PSDについて勉強するとそのような単純なケースばかりではないことが分かりました。


脳損傷そのものによる病態生理学的変化の結果、うつ病になるという、脳障害説というものがあるらしいのです。


ある研究によると、発症後の日常生活動作能力の程度とうつ病は必ずしも関係していなかったとの結果も出ているそうです。


脳卒中後遺症の身体機能が原因でのうつ病だけでは、説明がつかない部分もあるそうです。やはり、脳の器質的な障害の影響もあるんですね。

PSDと損傷部位の関係性


一番最初に発表されたものは、左前頭葉に障害があるケースにおいて有意にPSDの頻度が高いことが分かり、左前頭葉障害仮説が発表されました。


この発表後から、PSDと脳損傷部位との関係に対しての研究が進んでみたいです。その後、右半球では後頭葉に近い障害でPSDの頻度が高いことも発表されています。


その他にも研究発表はありますがsample sizeなども考慮すると、今のところ有力なものは左前頭葉、右後頭葉だと理解してもいいのではないでしょうか??




PSDの発症時期と発症頻度


脳卒中急性期から慢性期を通しての平均発症頻度は33%との研究があり、3人に1人がPSDを発症していることになります。結構な割合じゃないですか??


脳卒中では認知・運動障害、失語、構音障害なども見られるため、なかなか正確な数字は難しいかもしれませんね。


PSDの合併は、死亡率の増加、入院期間の延長、機能回復の遅延、QOLの低下に関連するという報告も見られており、適切な治療が必要とされます。


PSDの発症時期に関しては、脳卒中発症後3~6カ月でうつの頻度や程度が最も高くなり、その後は一度減少し、再び増加することが分かっています。


脳卒中発症後3~6カ月後のPSDは、脳の器質的な要因が強いと考えられており、その後の慢性期でのPSDは脳卒中後遺症に対する心因性が関連すると考えられています。


ちょうど回復期病棟でのリハビリを行っている時期に、PSDの発症頻度が高くなっており、回復期で働くセラピストとして正確な知識を持っていなければなりませんね。


PSDに対する適切な抗うつ薬治療によって、ADLや認知機能が改善され、生存率までも改善することが示されています。

PSDに対する治療方法


まずは早期発見が重要となります。PSDの初期症状としてよく見られるものに、頭痛・めまい・しびれ・不眠・倦怠感などの自覚症状の出現です。


すくなからず、高齢者であったり、麻痺などがあると聞かれやすい主訴ではありますが、PSDの可能性も念頭に傾聴することが大事だと思います。


治療としては、一般的には薬物療法が行われます。その他にも認知療法や音楽療法なども提唱されてはいます。


薬物療法では、抗うつ薬が選択されることが多いですが、通常のうつと違いPSDは抗うつ薬の効果が効きにくい傾向があり、また副作用も出やすいとゆわれています。


副作用として、せん妄状態が見られたり、パーキンソン症候群などが見られることがあります。PSDの治療が始まった際は、注意が必要ですね。


以上がPSDに対するまとめです。理学療法士は身体機能ばかりに目が向きがちですが、精神面に対する勉強やフォローも必要ですね。PSDと混合されやすいアパシーについても近々まとめたいと思います。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。