リハスタ

   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

歩行自立と転倒率について。自立の判断や身体機能以外の注意点について。

本日は歩行自立と転倒率について研究発表も紹介しながら、まとめてみたいと思います。


回復期リハビリテーション学会など、いろいろな学術大会で転倒率に関する研究発表がなされていますね。


いかに、入院患者の転倒を未然に防ぐかは、今後も重要な課題となります。特に回復期病棟では、転倒を予防しつつ活動性を向上させる必要があり、セラピストだけでなく病院全体での意識・取り組みが大事だと思っています。


病院全体の転倒に関する機能評価として、転倒率とゆーものがあります。転倒率とは簡単にゆーと、転倒した患者数/入院患者数で計算されます。


さらに歩行自立患者の転倒率を算出するには、自立後転倒した患者数/自立歩行獲得患者数で計算します。


これによって、歩行自立に移行した患者様が、その後どの程度の割合で転倒しているのか把握できます。


歩行獲得にかかわる理学療法士としてこの歩行自立後の転倒率には一定の水準を維持できるように、考察・対策をしなければなりませんね。

歩行自立後の転倒率について


色々な施設が転倒率を算出し発表されています。特に先行研究としてよく引用されている研究データは13~16%という転倒率だと思います。


実際に、私の病院の転倒率がどのくらいかは把握していなかったので、今後、転倒率の算出に取り組んでみてもいいのかなと考えています。


みなさんの施設では、転倒率の算出をされていますか?施設全体での転倒率の算出が難しいようであれば、セラピスト個人での転倒率を出してもいいかもしれませんね。


そーすれば、先行研究と比べることで自分の自立移行の判断が、一定の水準に達しているか考察できますね。


もしも、転倒率が高いのであれば、どの要素の評価が足りないのか、詰めていくことがまた自分のためになりますね。

歩行自立の判断に際して


歩行自立の決定はみなさんの病院ではどうされるのでしょうか??多くの病院は理学療法士の判断で自立に移行する場合が多いと思います。


中にはカンファレンスなどで、医師・看護師などの他職種で判断する病院もあるかとは思いますが。


では理学療法士は何を基準に歩行自立を判断しているのか??この基準に関しては何も設定されておらず、主に経験則など理学療法士の主観といってもよいのではないでしょうか??




歩行自立と評価スケール


中にはBBSやTUGなどのバランススケールを使用しているセラピストの方もいらっしゃるかもしれませんね。ただあれらのスケールはあくまでバランスを評価するためのスケールであって、歩行自立を判断するためのスケールではありません。


バランススケールを歩行自立の判断に活かせないか?という研究から歩行自立のカットオフ値が算出されたにすぎません。


なので本当に歩行自立を判断するためのスケールというものは私が知る限りありません。病院ごとでゆーと、いろいろなスケールを組み合わせて独自に歩行自立の基準を設けているところもあります。


おもしろい研究を読んだので、紹介させてもらいます。


理学療法士にアンケートをとったところ、95.2%の理学療法士が歩行自立の判断を行っているとのことでした。そのうち、評価バッテリーを使用している理学療法士が22.9%、その他の理学療法士は評価バッテリーを使用せず判断してるとのことです。


私個人もほとんどといってよいほど、自立の判断に評価バッテリーを使用していません。やはり経験則から判断していると思います。


が、セラピスト主観による判断だけで良いのか?と考えると、何かしらの客観的な材料も使用すべきなのかとは思います。


ただ、どうしても既存のバッテリーは歩行の中の一面しか評価できないような感じなんですよね。バランスはもちろんですが、高次脳機能の影響も多大にあると思うので、そのあたりを複合的に判断できるバッテリーがあればなーと思います。


SWWTtest(Stop Walking When Talking test)などやBESTestの項目に二重課題TUGなど歩行と高次脳機能とを組み合わせたものが少しずつ増えてきてはいますが。
BESTestについてはべつの記事にまとめているので参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


患者の能力以外の影響は??


また、私としては身体機能以外の面が転倒に影響していることもかなり意識しています。


例えば、服薬。抗うつ薬や催眠薬などの中枢神経作用薬を服薬していると、どうしてもふらつきが見られやすくなります。


ポリファーマシー(多剤併用)の記事にも書きましたが、服薬数が多くても転倒のリスクが高くなるとの研究もあります。
ポリファーマシーに関しては以下の記事を参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


また夜間の排尿回数も、転倒との相関が見られており、自立に移行する際に、その辺りの情報も把握しておかなければなりません。


実際に、日中の転倒より夜間の転倒の方が多いとの研究発表が多く、私自身もそのような印象を持っています。


やはり、服薬や夜間排尿回数などの関係も見逃せないポイントだと思います。


歩行に関しては理学療法士の専門分野です。自立の判断や、もし転倒したとしたら、そこに対しての責任も理学療法士が負うぐらいの気持ちが必要だと思っています。


ただ、身体機能だけではなく、高次脳機能や患者様の内的要素もしっかり把握しなければなりません。そのためには、他のリハスタッフや看護師・薬剤師とも積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。