リハスタ

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NSTに関するまとめ。加算や現状、今後の流れ。

リハビリでは、近年リハ栄養という考え方が徐々に広がっています。栄養状態に関しては、以前から栄養サポートチーム、いわゆるNST(Nutrition Support Team)活動が行われていました。


みなさんの病院でもNST活動はされているでしょうか?もしされているのでしたら、有効に活動できているでしょうか?


本日はNSTの活動についてまとめ、今後の参考になればと思います。

NSTのはじまり


今でこそNSTといえば、患者の栄養状態ということにすぐ結びつくほど浸透していますが、いつごろから普及し始めたのでしょうか?


2001年に、日本静脈経腸栄養学会が主導のもと、全科型栄養サポートチーム導入の有用性を啓発し、その設立・運営を支援するNSTプロジェクトを立ち上げ、活動を開始したそうです。


開始して、15年ほどでここまで普及するとはすごいですね。潜在的に、このような活動の必要性を現場では感じていたんでしょうか?


私が、病院に就職したときはすでにNST活動が当たり前のようにあったので、それ以前のことは想像できませんが。




栄養管理実施加算、NST加算


もちろん、NSTの普及にはNST自体の必要性や有効性が関わっているとは思いますが、やはり診療報酬上の加算も大きかったかもしれませんね。


2006年に、栄養管理実施加算なるものが新設されました。管理栄養士、医師、看護師、薬剤師などが、入院患者ごとに栄養状態を評価し、栄養管理を行うことで加算がとれるようになりました。


その後、全国の97%の施設で算定されるようになったため、入院基本料に包括されました。この流れを見ると、患者の栄養管理は特別なものではなく、ルーチンに行われるべきものになったといえます。


2010年には、栄養サポートチーム(NST)加算が新設されました。


当初は、急性期病院だけでの加算でしたが、2012年の診療報酬改定により、慢性期病院でも算定が可能となっています。


まず急性期病院で栄養不良の患者の発生を食い止めようとの考えだったのかもしれませんが、やはりそれに続く慢性期病院でも引き続きの積極的な栄養管理は求められますよね。

NST加算の現状は??


ではNST加算の現状はどんな感じになっているのでしょうか??


2014年のデータでは、加算算定施設は1119施設となっています。加算が新設された2010年の加算算定施設が500施設程度なので、およそ2倍になっています。


JSPENに登録されているNST稼働認定施設数は2014年で、1487施設となっています。仮に、加算算定施設の1119施設がすべてJSPENにも登録している施設だとしても、算定施設の割合は75%ほどとゆーことになります。


もちろん、病院の特色や病床数などの規模によっても算定を行わない選択をする施設もあると思います。その理由は、NST加算の算定要件のハードルの高さと診療報酬が釣り合っていないためだと思います。


算定要件として、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士が栄養管理に係る所定の研修を修了する必要があります。医師は10時間以上、その他の職種は40時間以上の研修を修了する必要があります。


まず、この4職種すべてが研修を修了しているというのも、ややハードルが高いように思います。まぁこれは時間をかければ超えれるハードルではあります。この職種に理学療法士が含まれていないのが残念です、、、


次が問題ですね、この4職種のうち一人は専従でなければなりません。専従というのは、NSTに関わる業務しか行えないということになります。


多くの施設がこの専従には管理栄養士を設定していることが多いようです。管理栄養士の年収が4職種の中では一番低い場合が多く、平均年収が350万程度とされています。


NST加算は患者一人につき週1回200点を算定可能です。管理栄養士の年収を月で割ると、一カ月30万円程度になります。30万円の給与をNST加算で捻出しようと思うと月に150回算定する必要があります。


加算対象の患者の条件として
①栄養管理計画の策定に係る栄養スクリーニングの結果、血中アルブミン値が3.0g/dl以下であって、栄養障害を有すると判定された患者

②経口摂取又は経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者

③経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者
 
④栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者

との条件が設定されています。


はたして中・小規模の病院で月にこのような患者で150回算定できるでしょうか??そして本当に週一回の算定が必要な患者ばかりなのでしょうか??
このあたりは、モラルハザードとしても問題視されています。


また回診やカンファレンスには専従者だけでなく、他の職種の専任者も同行する必要があり、これも拘束時間が増えるためハードルになってしまいます。




NSTの課題


NST加算についての内容ばかりになってしまいました。一般的なNST活動についての課題をまとめてみます。


NST回診の意見はあくまで提案という形で主治医にあげることが多いと思います。ですので、やはり最終的な決定は主治医が行うので、100%NST回診の意見が実行されるわけではありません。


また、NST活動を積極的に行っていても、中心となる医師が異動することで、活動力の低下が見られることもよくあります。


あとは、先ほどもNST加算の話をしましたが、加算をとること自体にも高いハードルがありますし、取れたとしても施設に収益が出ることはなかなか容易なことではありません。


アウトカム評価やエビデンスが不十分なため、今後も構築していく必要があります。


NSTの今後


加算要件や報酬の見直しがなされることを期待はしますが、NST活動による病院の収益が直接的な診療報酬だけでなく、適正な栄養療法により抗生剤使用の減少や、早期離床、在院日数の短縮など、他のメリットに関してもしっかりとしたエビデンスが構築されていく必要があります。


そうすれば、目先の利益だけではなく、NST加算に取り組める可能性もありますね。


また、入院中だけでなく、退院後の地域での生活においても適切な栄養管理が行えるような、広い視野でのNST活動が行えるような枠組みができればおもしろいなーと思います。


在宅生活中の栄養状態が良ければ、もし入院することになったとしても予後は良い方に行くのではないでしょうか?リハビリでもやせ細った患者が入院してくるより、栄養状態が良い方がリハビリの進みも良好ですよね。


そのあたりも踏まえて、地域でのNST活動なるものができればいいなと思います。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。