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サルコペニアと肥満が共存しているサルコペニア肥満とは?定義と対応について

サルコペニアと肥満が合体した病態、それがサルコペニア肥満です。サルコペニアとは、筋肉量の低下や筋力が低下した状態のことを指します。肥満とはBMIが25以上の体型のことを指します。


簡単にゆーとその二つが合わさった状態が、サルコペニア肥満というわけです。


もう少しイメージしやすく説明します。全く同じ身長・体重の方で、170㎝、80㎏の方が二人いたとします。BMIは27です。


1人は筋肉ムキムキのラグビー選手、もう一人は運動不足な会社員。一般的に考えると明らかにラグビー選手の方が筋肉量が多そうですよね。

太ももの筋肉量を比較したとします。

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こんな感じで、身長と体重は同じだとしても、その体内の筋肉量は生活習慣によってかなり差が出ます。


BMI25以上の肥満、かつ筋肉量が明らかに少ない方、それがサルコペニア肥満です。そんなサルコペニア肥満についてまとめたいと思います。

サルコペニアは自体は以前別の記事にまとめましたので、興味ある方はそちらもどうぞ。
physicalkun.hatenablog.com

サルコペニア肥満の定義とは??


サルコペニア肥満の明確な定義はまだ定められてはいません。まだまだ研究中の段階なのです。


サルコペニアの診断では下腿周径などが使われましたが、肥満体型の方の下腿周径を測っても必ずしも筋肉量を正確に現しているとはゆえないんですよね。


サルコペニア肥満の研究で有名な先生は、BMIが25以上の方で、筋肉率が男性で27.3%、女性で22%に満たない人はサルコペニア肥満と判定することを提唱されています。


ただこの筋肉率とゆーのは、市販の体組成計で計測可能ですが、メーカーによっても多少の数字の誤差がありますし、体内の水分量によっても変化するので、そのあたりは事前に知っておく必要があります。

サルコペニア肥満の簡易診断


なかなか体組成計がないご家庭もあると思うので、動作から筋肉量を推定する方法も紹介されています。


①立った状態で靴下がはけるかどうか。


文章にしてみれば何でもないことですが、実際できるでしょうか??


立った状態で靴下をはくには、当然片足立ちになる必要があります。片足立ちの状態で、多少なりともバランスを取りながら、靴下をはけるかどうかですね。


この動作が難しい場合は、お尻周りの筋肉(中殿筋)などの筋肉量が低下している可能性があります。


②椅子に腰かけた状態から片足だけで立てるかどうか。


これも足の筋力が必要な動作です。もちろん椅子の高さによって立ちやすい・立ちにくいがあるので、腰かけた状態で股関節・膝関節が90度ずつ曲がる程度の椅子の高さで行ってみてください。


これで立てない場合は、太もも(大腿四頭筋)やお尻(大殿筋)などの筋肉量が低下しているかもしれません。


③片足立ちで60秒保持できるかどうか。


片足立ちで何も持たず60秒立ち続けれるかどうかですね。これは筋力だけでなくバランス能力も関係はしてきますが、これが難しい場合はやはりお尻まわりの筋肉が低下している可能性が考えられます。


以上、BMI25以上の方で、3つの動作のうち1つでもできなければサルコペニア肥満の可能性が考えられます。




サルコペニア肥満の影響


サルコペニア肥満は、通常のサルコペニアと比較しても身体機能の低下が見られやすいです。特に高齢者のサルコペニア肥満ではより顕著です。具体的には歩行速度の低下、歩行障害、階段昇降の困難などがいえます。


サルコペニアの筋肉量の低下に加えて、脂肪などのために体重も増加しているので、当然の結果といえば当然ですね。少ない筋肉で重たい体を動かす必要があると考えられるので。


また人の代謝の多くには筋肉が関わっており、代謝に重要な筋肉が少ないということは、代謝障害も考えられます。


代謝にもいろいろんなものがあり、基礎代謝なんて言葉はよく耳にしますね。人が生きていくうえで必要最低限消費されるエネルギーです。これも筋肉量によって差が出てきます。


間違ったダイエット法で、筋肉量が減ってしまい、かえって代謝が悪くなり、その後リバウンドするなんて話もあります。サルコペニア肥満の方は、すでに代謝が悪い状態のため、余計に肥満が進みやすい状態といえます。


また骨格筋は血中の糖を筋肉内に取り組み、血糖調節にも大きくかかわっています。なので、サルコペニア肥満の方は、糖尿病のリスクが2.8倍とされています。


基本的に、高齢者の方で肥満体型の方はサルコペニア肥満の可能性が高いといってもよいのではなかと思っています。

サルコペニア肥満に対する食事や運動の介入。


サルコペニア肥満に対しては、低エネルギー・高たんぱく、とくにBCAAなどのアミノ酸投与が有効とされています。運動に関しては、レジスタンストレーニングと有酸素トレーニングの併用が有効とされています。


栄養に関する具体的なプランとしては、必要エネルギーは1日の必要エネルギーの-200~750kcalを目安とします。たんぱく質は、体重あたり1.0~1.2kg/日。トレーニングを行っている場合は、1.2~1.5kg/日程度のたんぱく質摂取量でもよいそうです。


運動に関しては、どうしても肥満体型の方には有酸素運動による減量がイメージしやすいですよね。ただ、サルコペニア肥満の方に対しては、有酸素運動ではたしかに体脂肪の減少は得られるかもしれませんが、筋肉量の維持・改善が得られにくいです。


なので、有酸素運動だけでなくレジスタンストレーニングによる筋肉量の維持・改善を図っていく必要があります。レジスタンストレーニングを行うことで、成長ホルモンが分泌され、筋肉の合成を促進することができます。運動負荷としては、自覚的運動強度で「ややきつい」程度の運動でよいとされています。


減量しながら筋肉量を維持・改善させるには、栄養・運動で適切に介入していく必要があります。定期的に体重計測や周径・皮下脂肪厚を図ることで、適切な介入ができているのか確認しながら、経過を観察することも大事だと思います。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。