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   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

理学療法士の臨床実習について。最近増えているクリニカルクラークシップとは。

理学療法士の臨床実習の在り方に関して、国会でも議論されており、今後はより厳密な体制が求められていくのだと思います。


特に最近では、クリニカルクラークシップによる臨床実習が推奨されており、この方法が主流となっていくような流れも感じています。


セラピスト側も臨床実習の在り方についてしっかり勉強する必要がありますね。


実際に、関西の学生が臨床実習中に自殺した事例も存在しています。裁判にもなり、実習施設である病院と養成校に対して賠償命令が出ていたと思います。


適切な環境下で適切な実習を提供することが、学生自身はもちろん、自分たちを守ることになるんでしょうね。

臨床実習のガイドライン


理学療法士協会のホームページで読むことが可能です。


現在の臨床実習の到達目標のミニマムは「ある程度の助言・指導のもとに、基本的理学療法を遂行できる」とされているみたいですね。


それ以前は「基本的理学療法を独立して行える」だったそうです。


なぜ、到達目標が変わったのか??それは、ここ数年で理学療法士の就業環境が大きく変わったからです。


当初は、理学療法士の数が圧倒的に不足しており、新卒者であっても一人職場で働かなければならないことが多くあったので、「基本的理学療法を独立して行える」までのレベルが目標とされていました。


しかし、今現在、新卒者で一人職場に就職する可能性はほぼ皆無でしょう。


新卒者に限らず、理学療法士全体で見ても、一人職場で働いている理学療法士は8.4%とのデータもありますからね。


そのような状況を踏まえて、「ある程度の助言・指導のもとに、基本的理学療法を遂行できる」を最低限の到達目標に設定したわけです。


もちろん最低限なので、それ以上のレベルに到達できることに越したことはないでしょうが。


なので、指導者のセラピスト側も最低限の到達レベルを知ることで、学生指導に対するプレッシャーから少し力が抜けるのではないでしょうか?

臨床実習指導者が備えるべき条件


臨床実習指導者は3年以上の実務経験を有する者であると定められていますが、その他の条件はありません。


ガイドラインでは、少なくとも理学療法士協会の新人教育プログラムを修了していることが望ましいとしています。


今後、より臨床実習に対して厳密なルールをつけるのであれば、確かに臨床実習指導者の条件についても見直す必要があると思います。


その中で新人教育プログラムは確かに分かりやすい条件だとは思います。が、新プロを修了しているからといって、指導者としての質が担保されるかといえば、正直疑問です。


臨床経験3年を5年に変えるのもありかなとは思いますが、やはり臨床経験が増えれば適切な指導ができるかと言われれば、ちょっと違うかとも思います、、、。


1番いいのは、協会が臨床実習指導者の認定講習を設定することですかね??その講習を受けなければ、臨床実習施設として登録できないくらいの強制力を持った。


そうすれば、意欲的にそのような講習を受けるセラピストは、学生指導に対しても真摯に考えているセラピストだと思うので、ある程度の質が担保できるかと思います。


あとは、多くのセラピストが自分の学生自体の臨床実習の経験をもとに、現在の実習生に対して指導しているという、不確かな教育体制も、認定講習を義務付けることで改善できるかもしれません。


学校側からすると、実習施設が減ってしまい苦労するかもしれませんが。制度導入から数年は移行期間を設定すれば、ある程度解消できるかとも思ったり。

従来型とクリニカルクラークシップ


臨床実習の形式は、事例基盤型実習 or 患者担当制実習と呼ばれる、従来から行われていた実習形式と、診療参加型実習 or クリニカルクラークシップ実習と呼ばれる協会のガイドラインが推奨している実習形式とに分けられます。


従来型は多くのセラピストが経験したとは思いますが、指導者の監督のもとで、1人ないしは2人の患者を担当し、その患者の評価・治療・再評価といった一連のプロセスを学習するものです。


この形式で問題と思うのが、実習の目的がどうしてもレポート書き上げることになりやすいことじゃないですか?


当院にも毎年複数の実習生が来ます。遅くまで実習生のレポート指導を行っているスタッフを見ます。学生もそれに応えようとおそらく睡眠時間を削ってレポートの直しをしてくるのでしょう。


そんな実習生が、日々の見学・治療の中で感じた疑問点について勉強してくる余裕があるでしょうか?


中には要領よくこなせる学生もいるかもしれませんが、多くの学生はレポートの手直しに無我夢中です、、、。


せっかくの臨床実習が初期レポート・最終レポートに追われてしまうのはもったいないと思います。


あとは、スタッフに関しても時間外が増えることで負担が強くなります。また最近はあまり遅くまで学生を残すことも良くないので、業務時間内に学生指導する時間も設けています。


なので学生指導に過剰に時間を取られるようになると、病院としても単位が減少しますし、結局は患者のデメリットにもつながってしまいます。


そこで、最近広がりつつあるのがクリニカルクラークシップですね。




クリニカルクラークシップ(CCS)のメリット・デメリット


現在、理学療法士協会が推奨している実習形式がクリニカルクラークシップ(診療参加型)です。


まだ十分な定義・方法は定まっていないような印象もあり、クリニカルクラークシップを導入している施設によっても方法が違うこともあるようです。


理学療法士協会の「臨床実習の手引き」によると基礎的な理念は

①患者担当はせず助手として診療参加する

②技術項目の細分化による実施

③見学、模倣、実施の段階付け

④できることからの診療参加学習

⑤指導者の役割は教育資源である です。


なかなかこれだけではクリニカルクラークシップのイメージはつかめませんよね。


特に見学・模倣・実施の部分について説明します。


「見学」は、患者への介入前に事前に対象者の状況、理学療法の目的・内容等は伝え、見るべきポイントも指摘しておきます。


その後、患者に対し手本となる技術を示し、さらにそれについて解説を加えます。


見学のプロセスを経ることで、セラピストの技術を視覚的にイメージでき、かつ言語的な説明が加わることで実習生の理解度が増すとされています。


「模倣」は、見学経験をもとに指導者の技術を模倣させる段階になります。


最近は、模倣前期・模倣後期に分けることが多く、模倣前期はやや試行の段階、模倣後期は実用的技術に近づく修正の段階とされています。


「実施」は、模倣を経験したうえで、基礎的な知識・リスク配慮・技能を用いたうえで指導者の見守りのもと対象者に実施することです。


こうした、「見学」・「模倣」・「実施」の流れを学生のレベルに応じて行っていき、少しずつ学生の実施可能な範囲を増やしていくイメージですね。

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なので、個別の担当患者は持たないため、従来の症例レポートは書かない場合が多いと思います。養成校もクリニカルクラークシップの場合は、レポート提出は義務付けていないようです。


私自身が初めてクリニカルクラークシップの言葉を聞いたのは、3~4年前ですかね。


当時は実習の教育方法に対してたいした関心もなかったですが、バイザー会議に度々出席するようになると、クリニカルクラークシップの話題が多いんですよね。


職場に帰って、クリニカルクラークシップの話題を出してみるも、ほとんどのセラピストが初耳。


狭い世界で働いているとどんどん取り残されていきますね。しっかり情報を収集して、発信できるようにしなければ、、。


以上、簡単なまとめにはなりましたが、セラピストも教育方法についてはしっかり勉強する必要がありそうですね。


スタッフ・学生の負担軽減、経験論による実習教育の見直し、ハラスメント予防などなど、、、。


色々考える余地はありそうです。適切な環境下での教育を提供することが、学生はもちろんのこと自分たちを守ることにつながると思うので、改めて教育の重要性を感じました。

本日も最後までお付き合いありがとうございました。