リハスタ

   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

リハ栄養を導入するとっかかりとしてNSTの活動に便乗。

以前に比べるとリハビリ関連の学術大会でも栄養状態に関する研究発表が見られる頻度が増えたような印象があります。リハ栄養とゆー言葉自体、セラピストだけでなく他職種にもかなり浸透してきたのかなーと思っています。


セラピストのみなさんの栄養状態に対する関心が、今後もどんどん広がっていけばいいなーと思います。今までと同じリハビリの運動プログラムでも、栄養状態が改善するだけで筋肉量の増加が期待でき、身体機能の向上の可能性が高くなるんですからね。


でも、組織としてリハ栄養をどのように病院に取り入れていくか、この点に関してはなかなか試行錯誤しているセラピスト、リハビリ部署が多いのではないでしょうか?


私自身も、今でも試行錯誤していますし、今後もどんどん改善するべき点は改善して、よりスムーズ・早期・オートマチックに患者様の栄養状態が改善できうる環境を整えていきたいと考えています。


本日は、当院でどのようにリハ栄養に取り組んでいるかをまとめてみたいと思います。

リハ栄養のはじまりっていつ??


そーいえばいつごろからリハ栄養の考えが出始めたのか、気になって調べてみました。


少なくとも、私は学生時代、栄養に関する講義は受けた記憶がありません。検査値としてアルブミンの見方ぐらいは勉強しましたが。


JSPEN(日本静脈経腸栄養学会)とゆー、とても大きな栄養関連の学会があります。そちらで初めてリハビリテーション栄養という特集が組まれたのが2011年


JSPENが認定制度を行っているNST専門療法士という資格制度がありますが、その資格を理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の取得が可能になったのが、2010年


それ以前から、セラピストの栄養状態への関与の有効性は発信されていたようですが、2010、2011年あたりがリハ栄養のはじまりと言えそうです。


私は、まだリハ栄養を導入して1年とちょっとしか経っておらず、あきらかにリハ栄養後発組だとはおもいますが、そんな私の病院でのリハ栄養の取り組みを紹介したいと思います。




NSTの活動に便乗


なかなかリハビリの部署単独でリハ栄養に関する取り組みを行っても、病院全体という組織に十分に浸透することは難しいと思います。リハ栄養といっても、当然、医師・看護師・栄養士・薬剤師などの理解・協力が必要な場面がありますからね。


なので、多くの病院が行っているように当院でもNST活動の一環としてリハ栄養の取り組みを行っています。


具体的には、患者の体重・BMI・体重減少率の経過のデータをリハ部署でも管理し、患者さまの経過や今後の活動性を踏まえて、現状の栄養状態・食事カロリーでよいのか検討しています。


病院全体としても、NST回診にあげる基準は設けていますが、その基準がリハ栄養の観点からゆーと、かなり低い基準なので、リハ部署独自に基準を設定し、その基準をもとにNST回診にあげるか判断をしています。


改善が必要と思われる患者がいた際は、月2回のNST回診の際にセラピストから発信してチーム内で検討し、主治医に提案する流れをとっています。


なかなか他部署から理解・協力が得られにくいケースもあるので、身体計測(上腕や下腿周径)なども入院時に評価し、NST回診にあげる際も再評価して、客観的な数字も一緒に伝えて、栄養状態の改善をお願いするようにしています。


またリハビリの内容を踏まえて活動係数を算出し、それをもとにTEE(全エネルギー消費量)を計算しています。TEEと現状の食事カロリーと照らし合わせて、今後の栄養状態の予後を検討しています。
消費エネルギー量に関しての記事は以下を参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


NSTの問題点


どうしても、NSTの性質上しょうがないのですが、あくまでNSTからの提案という形で主治医にあがるんですよね。


もちろん、提案は提案ですし、主治医には主治医の考えがあるのは当たり前なのですが、Drによってはなかなかリハ栄養の視点でのカロリー変更や栄養補助食品の使用の協力が得られにくい場合もあります。


特に、糖尿病患者や肥満傾向にある患者ではなかなか折り合いが難しい印象です。もちろん、血糖コントロールや減量が大事なのも理解しているつもりです。


ただ、減量に関しては、あまりに急激な減量は筋肉量の減少にもつながりますし、サルコペニア肥満とゆー言葉も出てきています。


肥満の糖尿病患者は痩せれば痩せた分良いというような考えを持っているDrもいるような気がして、もう少し減量のペースにも配分していただきたいのが正直な感想です。


そのあたりも踏まえていただきながら、食事カロリーを検討してもらえるように、今後私も院内での研究発表や文献等を収集して、Drにサジェスチョンできるようにならなければと思っています。

栄養補助食品の負担


あとリハ栄養の取り組みでよく問題になるのが栄養補助食品(リハたいむゼリーなど)のお金の負担をどうするのか??だと思います。私も、リハ栄養の取り組みをスタートした際に、頭を悩ましたところですし、リハ栄養関連の講習会にいったときも、ときどきこの話題で盛り上がったりします。


病院の理解が得られているところでは、すべて病院の持ち出しにしているところもあります。持ち出しというのは、病院が負担しているということです。


病院によっては、患者に負担をお願いしているところもあり、このあたりは経営的な面にも影響しますので、一人のセラピストの意見だけでは困難です。


ただ、私の考えとしては病院が負担するだけの価値が、リハ栄養にはあると思っています。私は回復期病棟を持っている病院で働いていますが、積極的に栄養補助食品を使用し、より早期に身体機能の改善やFIMの改善が得られるのであれば、それ自体が病院の利益になると思っています。


どうしても、患者側に負担をお願いするとなれば金銭的に協力が得られない場合や、そもそも家族の理解が得られない場合なども出てくると思います。栄養補助食品の使用ができれば、もう少し良くなる可能性があることを思うと、もったいないなーという気がします。


今後、回復期リハ病棟でのアウトカムのFIMが厳しくなってくると、栄養補助食品の病院負担の話もスムーズになるのかなーとは思っています。熊本にある病院なんかではしっかりと効果も出していますもんね。




私自身の今後の課題


今は主にリハビリ部署がデータを管理しています。今後、この活動が病院に浸透すれば栄養科でのデータ管理を行ってもらいたいと思っています。結構、データ管理も大変なんですよね、少しでも業務の負担を減らしたいのです。


あとは、病院のNSTの基準を変更することも考えています。もう少し早期から栄養状態の悪化を見つけられるようにしたいですねー。今の基準はもうかなり低栄養状態になってしまっているので。


この基準の変更ができれば、リハからのアクションがなくても、栄養状態の改善が得られやすく、オートマチックに改善可能かもしれません。


あとは、食事の内容です。普通食、高血圧食、糖尿病食、心臓病食、、、いろいろな食事箋がありますが、全体的にたんぱく質量がもう少し上げれたらと思っています。


腎臓病食ではなかなか難しいでしょうが、せめて普通食だけでもどうにかしたいです。たんぱく質をあげるとなると、食材費も上がると思うので、病院の理解を得る必要があります。これも簡単ではないですが、頑張りたいと思います。


あとは、NST専門療法士の資格もやっぱり気になるんですよねー。ただの一セラピストの意見より、NST専門療法士としての意見であれば、もう少し周りへの影響力もあると思うので、、、。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。