リハスタ

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リハビリと栄養。アルブミンなど血液データからも栄養状態を把握。

回復期入院料に、初めて栄養管理に関する要件が追加されました。回復期入院料1を算定するには、管理栄養士がリハビリテーション実施計画等の作成に参画すること、栄養状態の定期的な評価や計画の見直しを行うことが求められるようになりました。
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また、病棟に専任の常勤管理栄養士の配置が望ましいことも言及されています。今回は、「望ましい」に留まりましたが、いずれはこれも算定要件に含まれるかもしれませんね。


数年前から個人的にはリハ栄養に関心があり、それなりに勉強していましたが、今回の改定でここまで栄養状態に関するものが盛り込まれるとは思っていなかったので、正直驚きました。


栄養に関して勉強はしているが、なかなか院内での取り組みに難渋していたり、浸透していかない現状に悩んでいる方も多いのが、今のリハ栄養の実態だと思います。今回の改定はそのような方々の追い風になると思います。より一層、リハビリと栄養の重要性が広まればいいですね。


さて、栄養状態に関する検査・評価項目はいろいろとありますが、本日は血液検査によって分かる総蛋白、アルブミンを中心にまとめたいと思います。これから栄養に関する勉強を始めようと思っている方の参考になればと思います。

血中の蛋白

ヒトの血中には100種類以上の蛋白が存在しています。これらすべてを合わせた蛋白の総量が総蛋白(TP:Total protein)といわれています。


種類自体は100種類以上も存在はしていますが、総蛋白の内訳はアルブミンが50~60%、グロブリンが30~40%とされています。このあたりの内訳の数字は、文献によって多少違いがありますが、大事なのは100種類以上存在していても、アルブミンとグロブリンの2種類で9割以上占めているということです。その他の大多数は極微量ですね。


なので、総蛋白の値の変化は、アルブミンもしくはグロブリンの変化によるものと考えられます。

アルブミンとグロブリン

では、アルブミンとグロブリンの簡単な特徴をまとめておきます。

アルブミンは、肝臓で合成される成分です。なので、肝機能障害などでもアルブミンの生成が低下するので、アルブミン値の低下が起こりえます。


ただ、ヒトの肝臓というのはかなり予備力が高い臓器とされています。生体肝移植で半分以上移植しても、ドナー提供者は日常生活を送れることを考えれば納得してもらえると思います。


なので、よほど重度の肝機能障害でない限り、肝機能障害によるアルブミン値の低下はないと考えていいかと思います。


アルブミンの作用は、浸透圧の調整なので、血管内に水分を保持する作用があります。アルブミンが低下すると浮腫が起こるのはこのためですね。


グロブリンはリンパ球が分泌する成分です。抗体(IgEなど)として働くので、免疫反応を担当しています。




総蛋白の変化の解釈

では、実際の血液検査の総蛋白を見る際の考え方です。


まず総蛋白が低下している場合。さきほども言いましたが、総蛋白はアルブミンとグロブリンの総量と考えて問題ありません。なので総蛋白の低下は、アルブミンorグロブリンの低下です。


グロブリンは、免疫反応を担当する成分です。なので、免疫抑制剤の使用や放射線治療後、AIDsなどでグロブリンの低下が起こりえます。このような状態はカルテを見れば一目瞭然なので、難しい判断ではないと思います。


そういった例でない場合は、アルブミンが低下しているケースがほとんどです。アルブミンは食事摂取量の影響を受けるので、食事摂取量の状態を確認する必要があります。ただ、アルブミンは食事摂取以外の要素にも影響されるので、それらはあとでまとめます。


次に、総蛋白が上昇している場合。アルブミンの量自体が正常より上昇することはほとんどありません。となると、グロブリンの量が増えているということです。


グロブリンの量が増えているということは、体内で免疫反応が高まっているので悪性腫瘍であったり、感染症が考えられます。つまり、総蛋白が高くても、栄養状態が良いわけではないということですね。

アルブミンの解釈

栄養状態の判断のためにアルブミンを見ますが、アルブミンは体内のいろいろな状態によって変化するために、その注意点を把握した上で検査値を見る必要があります。


①リアルタイムの指標ではない

まず最初に、アルブミンの数値はリアルタイムの指標ではないということです。半減期というものを考慮する必要があるので、採血日から約2~3週間前の栄養状態を反映していまさす。


なので、最近は食事摂取量が上がってきていても、2~3週間前は点滴や食事摂取量が低下している場合は、血液検査のアルブミン値は低い状態で出てきます。


アルブミン値を見る際は、直近2~3週間前の状態を考えながら見る必要があります。そして、その場での数値に一喜一憂せず、現在の食事状況を踏まえ、今後の栄養状態の予後を予測してみましょう。


②炎症症状の影響を受ける

またアルブミンは体内に炎症症状があると、栄養状態が良好だとしてもアルブミン値は低下します。例えば、大腿骨頸部骨折の術後の患者で考えると、手術部に炎症症状が見られ、創傷治癒のためにたんぱく質が必要となるので、アルブミンがそこで消費されます。


また、炎症により血管透過性も亢進するので、血管外へアルブミンが流出する影響もあり、アルブミン値が低下します。なので、アルブミン値を見る際は、同時にCRPの値も確認することで、より正確な判断が行えます。


③体内の水分量の影響を受ける。

体内が脱水状態にある場合は、血液が濃縮されるため結果として単位量あたりのアルブミンの量が増えます。検査結果としてはアルブミンの量が高く反映されます。逆に、水分過多の場合は、血液が希釈されるので、アルブミンの割合が減少するので、アルブミン値は低くなります。


Naなどの電解質も同時に確認することで、脱水などの状態も把握できるので、CRPと同時にチェックする癖をつけましょう。


以上のように、アルブミン値を正確に判断するためにはその他の検査項目もチェックする必要があります。


また最近ではよりリアルタイムの栄養状態の指標としてプレアルブミン、トランスフェリンなどのラピッドターンオーバープロテインが推奨されています。ラピッド(早い)ターンオーバー(入れ替わり)、つまり半減期が短い蛋白ですね。アルブミンの半減期は2~3週間ですが、プレアルブミンは半減期が2日、トランスフェリンは7日とされており、より直近の栄養状態の把握に便利になっています。


体重や周径などのフィジカルアセスメントだけでなく、血液データも有効に使えると患者の栄養状態の把握も一歩前進すると思います。血液データの解釈は難しいですが、まずはアルブミンから入るだけでも少しずつ視野が広がって、また違った臨床を感じ取れます。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。