発達障害に悩む人は要チェック。症状改善のキーワードは「脳腸相関」
「脳腸相関」について、以前別の記事でまとめさせてもらいました。
脳腸相関について、調べていく中で気になる研究が。それは発達障害と腸内環境の関係に関するものです。
私は理学療法士として病院に勤めており、発達障害(主には発達性協調運動障害)を持つ子供に対してリハビリを行っています。
ただ、今まで発達障害と腸内環境についての知見は聞いたことがなく、これは新しい可能性を感じましたので、まとめてみます。
子供の発達障害で悩まれているご両親の方は、ぜひ読んでみてください。
脳腸相関とは
読んで字のごとく、脳と腸がお互いに影響しあっていることが最近の研究で分かってきました。
脳⇒腸はなんとなくイメージが湧きますよね。ストレスなどが溜まると、食欲不振になったり、腸管の異常運動で腹部症状が見られたりします。
腸⇒脳への作用が最近分かってきたことです。
ヒトの体内には数百兆個の細菌が存在していますが、その大部分の90%が腸内に生息しており、これを腸内細菌叢と呼びます。
テレビや雑誌でよく聞く腸内フローラは腸内細菌叢の言い回しの違いで、内容は同じです。
ヒトの血液中の小分子量の36%が腸内細菌叢が関与しているとの報告もあります。全身を巡る血液にそれだけの関与があるのであれば、腸内細菌叢が身体にさまざまな影響を与えることはなんとく想像できますよね。
発達障害とは
発達障害とは、脳機能の発達に関係する障害です。
一言に「発達障害」といっても、その特性・症状は非常に個人差が多く、環境などによっても大きく変化します。
主な発達障害として、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(Learning Disability:LD)、発達性協調運動障害(DCD)に分類されます。
分類はされますが、複数の障害が重複することもあったり、本当に多種多様な症状が観察されます。
発達障害の原因は不明で、先天的な脳機能の障害で発達に偏りが見られるという考え方が現在では主流となっています。
今までは「親のしつけがなってない」で済まされていた子供も、もしかしたら発達障害の可能性も考えられます。
個人的にはもう少し発達障害に対する理解が一般の方にも広がってほしいのと、学校の教員の方にも理解を深めてほしいと思っています。
発達障害と腸内細菌叢
さて、ここからが本日のメインです。
発達障害の中で、自閉症スペクトラム(ASD)には消化器症状を併存する頻度が高いことが報告されています。
報告によると、ASDの子供の24%に少なくとも慢性的な消化器症状(下痢、便秘、腹痛・腹部不快感)があり、一番頻度の高い症状は下痢であったとの結果があります。
ASDの子供を、消化器症状のあるグループとないグループとで比較すると、苛立ち、多動、社会的引きこもり、常同性などの行動障害や不安症状が、消化器症状のあるグループのほうが顕著に見られたとの報告もあります。
マウスでの研究結果
人工的に腸内細菌をなくした無菌マウスと、通常のマウスをさまざまな面から比較した研究もあります。
まずストレスに対する耐性。無菌マウスの方が、ストレスに対する耐性が低いことが分かりました。
マウスの行動パターンの比較。無菌マウスの方が明らかに行動範囲が広く、過活動性が認められました。
不安関連行動の比較。無菌マウスの方が不安症状が強いことが観察されました。
これらの結果から、腸内細菌叢がストレス耐性、多動症、不安症状など精神・行動障害に影響を及ぼす可能性があることが分かりました。
やはり腸内細菌叢ってすごく大事で、脳腸相関の考えも非常に興味深いです。
症状改善のために
少し整理すると、①腸内細菌叢がストレス耐性、多動症、不安症状などと影響があること。
②ASDの子供では、消化器症状を有する子供が明らかに多く、健常者とは異なる腸内細菌叢であること。
これらのことを踏まえると、ASDの子供の腸内細菌叢を改善させることができれば、主症状(多動症など)を軽減させる可能性は大いに考えられます。
腸内細菌叢の形成は一般的に生後数日から1週間で、その人の腸内細菌叢の原形が形成されると言われています。
ただ、これは原形であり、その後一切変化しないというわけではありません。一切変化しないのであれば、これほど腸内細菌叢(腸内フローラ)が注目されることはないですから。
研究でも、ビフィズス菌を含む乳製品を長期的に摂取することで、腸内細菌叢の細菌の種類や割合が良い方向へ改善する変化が見られたとの結果も出ています。
まだ研究で可能性が考えられている段階の話ではありますが、もしお子さん等でASDによる多動症や不安症状に悩まれている方は、乳製品の摂取を検討しても良いかと思います。
まぁ乳製品の摂取自体デメリットはないと思いますし、そもそも体にも良いものですしね。
この知見を知ってからは、私が担当している小児リハのご両親にはすべて説明し、乳製品の摂取をおすすめしています。
まだまだ発達障害と腸内細菌叢の関係性は十分ではありませんが、今後も勉強していきたいと思います。