リハスタ

   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

健康のためには骨折予防が最重要。骨粗鬆症とその対策。

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2年前に学会に参加した際、骨粗鬆症マネージャーや骨粗鬆症リエゾンなど、聞きなれない単語がポンポン出ていて骨粗鬆症に関する知識不足を感じました。


ふと考えると、養成校を卒業してから骨粗鬆症に関して勉強した記憶はほとんどないですね。改めて勉強してみると結構おもしろかったんですが、ようやくまとめることができました。


というかブログの更新自体ものすごく久しぶり、、、。またちょこちょこと更新できたらと思います。


まずは骨粗鬆症に関する内容を整理してみました。転倒予防だけでなく、理学療法士として骨粗鬆症の病態についてもしっかりと知識を身につけておきたいですね。


骨粗鬆症マネージャー、リエゾンについては後日まとめます。

大腿骨近位部骨折患者

まずは大腿骨近位部骨折患者数の推移について紹介します。


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1987年から5年おきに全国調査が行われています。グラフから分かるように年々増加しており、今後の推計でも2040年には32万人が罹患すると予測されています。


理学療法士として、少しでも患者数の減少に貢献したいところですね。




骨粗鬆症の病態

健常者では、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成がバランスよく行われており、骨全体の5%程度が常にリモデリングされています。


破骨細胞と骨芽細胞のバランスをコントロールする役割はエストロゲンが担っています。


閉経によりエストロゲンの機能が減少するために、骨吸収と骨形成のアンバランスが引き起こされ骨の脆弱性を来した状態。これが骨粗鬆症の病態です。

診断基準

骨粗鬆症の診断基準は?と聞かれて思い浮かべるのは何でしょうか?


なんとなく「骨密度」というワードが思い浮かぶ方が多いのかと思います。


間違いではありません、骨密度の値が健常者の平均の70%以下になると骨粗鬆症と診断されます。でもそれだけでは不十分なんですよね。


多くの方が「脆弱性骨折」に関する診断基準を知らないと思います。もちろん私も知りませんでした。


脆弱性骨折とは、「立位に相当する高さからの転倒による骨折」とされています。要は歩いている途中に転んだりして骨折したものは脆弱性骨折。階段から落ちたり、脚立で作業中に落ちて骨折したものは脆弱性骨折ではないということですね。


そして、脆弱性骨折の中でも骨折部位が大腿骨近位部骨折または椎体骨折の場合は、骨密度の値に関係なく骨粗鬆症と診断されます。


つまり歩行中に転倒し、大腿骨近位部骨折・椎体骨折になった人は、骨粗鬆症と診断されるということです。ということは、思っていた以上に骨粗鬆症患者って多い!!って思いませんか?


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左側の青枠は知っているけど、右の赤枠まで十分に理解している人はあまりいないのではないでしょうか?

薬物治療

骨粗鬆症に対する治療薬は確実に進歩していっています。それでも、一番最初に大腿骨近位部骨折患者数の推移を示したように、骨折患者が増加の一途をたどっているのが現状です。


その原因として、骨粗鬆症患者に対する治療率が低いことが指摘されています。推定1280万人の骨粗鬆症患者がいると考えられていますが、およそ200万人にしか治療が行われていないとの報告があります。


すでに大腿骨近位部骨折・椎体骨折の既往がある患者でも治療を受けていたのは20%との報告も。


また治療継続率の低さも問題視されていますね。1年間で45.2%が処方通りの服薬ができない、5年以内に52.1%が治療から脱落するとの報告があります。


たしかに、骨粗鬆症の薬物治療で第一選択であるビスホスホネートは少し複雑です。毎日飲むもの、1/W、1/Mなど服薬頻度に色々種類もありますし、服薬後30分は臥床を控える必要もあります。


血圧・血糖などは容易に計測できるので薬の薬効を自覚できますが、骨密度の変化は自覚することもできませんし、薬効を感じられないため治療継続率も低下しがちなのかもしれませんね。


この当たりは、医師・薬剤師だけでなく、理学療法士もリハビリの合間に服薬の重要性を伝えるだけでも患者のモチベーションを上げることはできると思います。




運動療法

高齢者・閉経後女性・閉経後骨粗鬆症女性などに対しては、太極拳・筋力訓練・ウォーキングなどにより骨密度の改善が得られたというエビデンスは報告されています。


しかし、残念ながらすでに脆弱性骨折を来している骨粗鬆症患者に対する運動療法のエビデンスは今のところ不十分なのが現状です。


しかし骨へのメカニカルストレスにより骨芽細胞の活性が得られ、骨密度・骨量の改善の可能性が考えられています。


ある研究では、大腿骨頭にかかる負荷量という観点で、1分間の片脚立位と53分間の歩行はおなじ負荷量という報告があります。


これなら入院中でも自宅でも、容易にできるので負荷量を確保しやすいと思われます。ぜひ日々の運動療法、自主練習指導でも参考にしてみてください。