リハスタ

   理学療法士による知っとくとためになる情報発信

呼吸療法認定士の過去問を紹介。受験の際の参考にしてください。

以前、別の記事で私が試験勉強で使っていた資料を掲載させていただきました。
physicalkun.hatenablog.com


今回は、試験のあと、帰りの新幹線で書き留めたものをWordに入力していたものがあったので、記事にさせていただきます。



呼吸療法認定士の試験問題は持ち帰りができないため、自己採点は自分の記憶が頼りです。


万が一、不合格だったときのことを考えて、少しでも問題を思い出して書き留めておくと、来年の役に立つかもしれません。合格間違いなしの方は、まどろっこしいことはせず祝杯をあげましょう!

さて、Wordのデータですが、あくまで自分の記憶で書き留めたものなので、100%正確なものではないと思うので、その点だけご了承ください。

問題文だけのものや、選択肢が抜けているものもたくさんありますが、こんなレベルの問題なんだな、ぐらいに思ってください。





実際の過去問


身体障害者認定について
①1.3.4級しかない
②自覚症状が考慮される
③他に障害があれば、1級あげれる
④4段階に分類されている
⑤?


気管について正しいもの
①門歯から咽頭までを上気道という。
②主気管支は右側長い。
③呼吸細気管支は終末細気管支よりも末梢にある。
④第4〜6胸椎で主気管支は分岐する。
⑤?


気管について正しいもの
①チューブは右気管支に入りやすい
②軟骨と腺毛の分布はほぼ一致している
③左右の肺葉の数について
④気管の数について
⑤?


気管について正しいもの
①肺動脈は気管支に併走する
②右肺の区域の数について
③④⑤?


A-aDO2の開大を伴わないもの
①死腔
②肺胞低換気
③シャント
④拡散障害
⑤換気血流不均等


肺機能検査
①BTPSについて
②STPDについて
③ATPSについて


1番高い酸素吸入濃度は?
①貯気バック付マスク
②ベンチュリーマスク
③酸素マスク
④⑤?


肺活量について正しいもの
①肺活量=一回換気量+予備吸気量+予備呼気量


肺気量について間違いは
①TLCはVC+FRC
②1秒率は加齢により低下
③RVは加齢により増加
④⑤?


気管切開の適応で間違いは?
①頸髄損傷
②喉頭浮腫
③両側声帯麻痺
④顔面外傷
⑤?


カフについて
①カフ容量が大きいチューブが使用される
②35以上になると血流が阻害される
③④⑤?


陽圧人工呼吸の影響
①心拍出量の増加
②中心静脈圧の上昇
③脳圧静脈圧
④尿量の減少
⑤?


ウィーニング中止の基準は?
①不整脈
②努力呼吸
③呼吸回数?
④⑤?


気道可逆性試験について間違いは
①β刺激薬を吸入し、前後の1秒率を使って改善率を計算する
②気管支ぜんそくの場合に行なう
③改善率の計算式
④⑤?


FRCの測定方法は?
①N2単一呼出曲線検査
②N2洗いだし開放回路法
③ヘリウム閉鎖回路法
④⑤?


N2単一呼出曲線で正しいもの
①100%酸素を最大吸気位まで吸入する
②第4相:肺底部の気道が閉塞する
③第1相:
④第2相:
⑤第3相:


コンプライアンスで間違い
①コンプライアンスの値が大きいのは肺が膨らみやすい
②コンプライアンスの値が小さいのは肺が膨らみにくい
③④⑤?


呼気筋で正しいもの
①内肋間筋
②外肋間筋
③横隔膜
④腹直筋
⑤胸鎖乳突筋


低酸素血症の原因で間違いは?
①死腔
②肺胞低換気
③シャント
④拡散障害
⑤換気血流不均等


フレイルチェストで誤っているもの
①機能的残気量の上昇
②コンプライアンスの減少
③換気量の減少
④シャントの増大
⑤低酸素血症


ARDSで間違いは?
①ALIはARDSが重症になったもの
②③④⑤?




問題文だけの過去問

選択肢までは思い出せなかったけど、問題文だけのものも一応書いときます。問題文にまつわる内容も認定テキストで押さえておくといいと思います。


抗コリン薬の副作用について

ステロイドの副作用について

吸入ステロイドについて

男性の門歯から気管分岐部までの長さは?

肺胞に届く粒子は?

口すぼめ呼吸について

新生児の血ガスについて


以上です。過去問がそのまま試験に出ることもあるので、少しでも役立ててください。


しかし、記事を作りながら思ったんですが、正直、ほとんど今の私は答えられませんね〜。また時間があるときに、久しぶりに認定テキスト見直してみようかなーと思いました。


リハ栄養を導入するとっかかりとしてNSTの活動に便乗。

以前に比べるとリハビリ関連の学術大会でも栄養状態に関する研究発表が見られる頻度が増えたような印象があります。リハ栄養とゆー言葉自体、セラピストだけでなく他職種にもかなり浸透してきたのかなーと思っています。


セラピストのみなさんの栄養状態に対する関心が、今後もどんどん広がっていけばいいなーと思います。今までと同じリハビリの運動プログラムでも、栄養状態が改善するだけで筋肉量の増加が期待でき、身体機能の向上の可能性が高くなるんですからね。


でも、組織としてリハ栄養をどのように病院に取り入れていくか、この点に関してはなかなか試行錯誤しているセラピスト、リハビリ部署が多いのではないでしょうか?


私自身も、今でも試行錯誤していますし、今後もどんどん改善するべき点は改善して、よりスムーズ・早期・オートマチックに患者様の栄養状態が改善できうる環境を整えていきたいと考えています。


本日は、当院でどのようにリハ栄養に取り組んでいるかをまとめてみたいと思います。

リハ栄養のはじまりっていつ??


そーいえばいつごろからリハ栄養の考えが出始めたのか、気になって調べてみました。


少なくとも、私は学生時代、栄養に関する講義は受けた記憶がありません。検査値としてアルブミンの見方ぐらいは勉強しましたが。


JSPEN(日本静脈経腸栄養学会)とゆー、とても大きな栄養関連の学会があります。そちらで初めてリハビリテーション栄養という特集が組まれたのが2011年


JSPENが認定制度を行っているNST専門療法士という資格制度がありますが、その資格を理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の取得が可能になったのが、2010年


それ以前から、セラピストの栄養状態への関与の有効性は発信されていたようですが、2010、2011年あたりがリハ栄養のはじまりと言えそうです。


私は、まだリハ栄養を導入して1年とちょっとしか経っておらず、あきらかにリハ栄養後発組だとはおもいますが、そんな私の病院でのリハ栄養の取り組みを紹介したいと思います。




NSTの活動に便乗


なかなかリハビリの部署単独でリハ栄養に関する取り組みを行っても、病院全体という組織に十分に浸透することは難しいと思います。リハ栄養といっても、当然、医師・看護師・栄養士・薬剤師などの理解・協力が必要な場面がありますからね。


なので、多くの病院が行っているように当院でもNST活動の一環としてリハ栄養の取り組みを行っています。


具体的には、患者の体重・BMI・体重減少率の経過のデータをリハ部署でも管理し、患者さまの経過や今後の活動性を踏まえて、現状の栄養状態・食事カロリーでよいのか検討しています。


病院全体としても、NST回診にあげる基準は設けていますが、その基準がリハ栄養の観点からゆーと、かなり低い基準なので、リハ部署独自に基準を設定し、その基準をもとにNST回診にあげるか判断をしています。


改善が必要と思われる患者がいた際は、月2回のNST回診の際にセラピストから発信してチーム内で検討し、主治医に提案する流れをとっています。


なかなか他部署から理解・協力が得られにくいケースもあるので、身体計測(上腕や下腿周径)なども入院時に評価し、NST回診にあげる際も再評価して、客観的な数字も一緒に伝えて、栄養状態の改善をお願いするようにしています。


またリハビリの内容を踏まえて活動係数を算出し、それをもとにTEE(全エネルギー消費量)を計算しています。TEEと現状の食事カロリーと照らし合わせて、今後の栄養状態の予後を検討しています。
消費エネルギー量に関しての記事は以下を参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


NSTの問題点


どうしても、NSTの性質上しょうがないのですが、あくまでNSTからの提案という形で主治医にあがるんですよね。


もちろん、提案は提案ですし、主治医には主治医の考えがあるのは当たり前なのですが、Drによってはなかなかリハ栄養の視点でのカロリー変更や栄養補助食品の使用の協力が得られにくい場合もあります。


特に、糖尿病患者や肥満傾向にある患者ではなかなか折り合いが難しい印象です。もちろん、血糖コントロールや減量が大事なのも理解しているつもりです。


ただ、減量に関しては、あまりに急激な減量は筋肉量の減少にもつながりますし、サルコペニア肥満とゆー言葉も出てきています。


肥満の糖尿病患者は痩せれば痩せた分良いというような考えを持っているDrもいるような気がして、もう少し減量のペースにも配分していただきたいのが正直な感想です。


そのあたりも踏まえていただきながら、食事カロリーを検討してもらえるように、今後私も院内での研究発表や文献等を収集して、Drにサジェスチョンできるようにならなければと思っています。

栄養補助食品の負担


あとリハ栄養の取り組みでよく問題になるのが栄養補助食品(リハたいむゼリーなど)のお金の負担をどうするのか??だと思います。私も、リハ栄養の取り組みをスタートした際に、頭を悩ましたところですし、リハ栄養関連の講習会にいったときも、ときどきこの話題で盛り上がったりします。


病院の理解が得られているところでは、すべて病院の持ち出しにしているところもあります。持ち出しというのは、病院が負担しているということです。


病院によっては、患者に負担をお願いしているところもあり、このあたりは経営的な面にも影響しますので、一人のセラピストの意見だけでは困難です。


ただ、私の考えとしては病院が負担するだけの価値が、リハ栄養にはあると思っています。私は回復期病棟を持っている病院で働いていますが、積極的に栄養補助食品を使用し、より早期に身体機能の改善やFIMの改善が得られるのであれば、それ自体が病院の利益になると思っています。


どうしても、患者側に負担をお願いするとなれば金銭的に協力が得られない場合や、そもそも家族の理解が得られない場合なども出てくると思います。栄養補助食品の使用ができれば、もう少し良くなる可能性があることを思うと、もったいないなーという気がします。


今後、回復期リハ病棟でのアウトカムのFIMが厳しくなってくると、栄養補助食品の病院負担の話もスムーズになるのかなーとは思っています。熊本にある病院なんかではしっかりと効果も出していますもんね。




私自身の今後の課題


今は主にリハビリ部署がデータを管理しています。今後、この活動が病院に浸透すれば栄養科でのデータ管理を行ってもらいたいと思っています。結構、データ管理も大変なんですよね、少しでも業務の負担を減らしたいのです。


あとは、病院のNSTの基準を変更することも考えています。もう少し早期から栄養状態の悪化を見つけられるようにしたいですねー。今の基準はもうかなり低栄養状態になってしまっているので。


この基準の変更ができれば、リハからのアクションがなくても、栄養状態の改善が得られやすく、オートマチックに改善可能かもしれません。


あとは、食事の内容です。普通食、高血圧食、糖尿病食、心臓病食、、、いろいろな食事箋がありますが、全体的にたんぱく質量がもう少し上げれたらと思っています。


腎臓病食ではなかなか難しいでしょうが、せめて普通食だけでもどうにかしたいです。たんぱく質をあげるとなると、食材費も上がると思うので、病院の理解を得る必要があります。これも簡単ではないですが、頑張りたいと思います。


あとは、NST専門療法士の資格もやっぱり気になるんですよねー。ただの一セラピストの意見より、NST専門療法士としての意見であれば、もう少し周りへの影響力もあると思うので、、、。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


理学療法士の気になる残業・副業などの実態について。

最近、理学療法士に関するいろいろなデータを見る機会があったので、特に気になったところを私の個人的な感想も交えながらつらつら書いてみたいと思います。


みなさん自身や職場と比較してみると、またおもしろいかもしれません。

理学療法士の職業人としてのデータ


①理学療法士はやりがいのある仕事かどうか??


そう思うが55%、ややそう思うが30%でした。肯定的な意見が85%という結果で少し安心しました。私自身も、やりがいのある仕事だと思っています。


自分の努力が結果に結びつきやすく、ある程度の自由度もあることがおもしろい仕事だと思います。ただ、理学療法士だけでなくリハビリ全体に対する評価はもう少しされてもいいのではと思います。


まだまだ、理学療法士としての法的整備ができて50年ほどで、歴史は浅いですから、これからもどんどんEBを構築していく必要があるんでしょうね。


②理学療法士を一生続けたいか??


そう思うが42%、ややそう思うが26%でした。肯定的な意見が66%ほど。これを多いとするか少ないとするかは難しいところですねー。


残りの4割に関しては迷いがあるということで、気持ちは分からなくはありません。やはり、給与面での悩みが多いのだと思います。


私自身は続けたいと思いますが、もし子供が理学療法士になりたいといえば、、、強くは薦められないかもしれません、、、。


③ストレスの有無


とてもストレスを感じるが22%、ややストレスを感じるが53%。この数字だけ見ると、理学療法士はストレスを感じやすい仕事だと思う方もいらっしゃるかもしれません。


でも医療にかかわらず働いている社会人に対してのアンケートでも、とてもストレスを感じるが29%、ややストレスを感じるが56%との結果もあり、特に理学療法士の仕事がストレスの強い仕事ではないということが分かります。


社会で働くこと自体かなりストレスなんですよね。自分だけがストレスを感じているわけではないと分かるだけで少し気が楽になるかもしれません。私は仕事が好きな部類に入るとは思いますが、好きだからストレスを感じないというわけではないですよね。


患者様のことで悩むと、夢にまで見たりすることもあります。年に1,2回は、患者さんが車いすから勝手に立ち上がって一人で歩いてる夢を見て、慌てて手を伸ばそうとして目が覚めることもあります。夢遊病に近いレベルかもしれません(笑)


④自分のことをどの程度幸せと感じているか?

幸せであるが27%、どちらかといえば幸せであるが53%。8割の方が肯定的な意見でした。


8割が幸せではあるが、この仕事を一生続けたいと思うのが6割ほど。幸せなことと、仕事を続けたいと思うかはイコールではないんですねー。仕事というものは難しいです。




業務に関するデータ(役職、残業、有休)

①職業上の地位


一般職員が60%、主任級が16%、科長級が9%のような結果になっています。病院によって役職の名称はそれぞれなので細かい内訳はあまり妥当性はないと思います。


役職の数は職場のセラピストの規模にもよるとは思います。ただ病院全体の性質上、なかなか一般企業に比べると役職が少ない病院が多いのかなーと思います。なので、どうしても役職に就ける人はごく一部になってしまいますよね。


②研究の時間(1週間平均)

0分が53%、1時間未満が27%、2時間未満が7%。ん~、まぁ現実はこんなもんですよね。どうしても、病院としては単位取得がメインになりますし、日々の業務をこなしながら、プラスアルファで研究までとなるとこのくらいの数字になると思います。


ただ、以前に比べると研究に割いている時間は少し増加しているらしいので、いい方向に向かっているのだと思います。


③残業時間(一カ月平均)

割合の多い順にいくと、0時間が26%、10~19時間が19%、20~29時間が9.7%、6~9時間が8.6%といった感じです。


この結果を見ると、なかなか2極化が進んでいるなーと感じますね。病院によっては、残業をしないように通達している職場もあるのかもしれませんが、私の病院では0時間は残念ながら難しいのかなと思います。0時間にする努力は管理職や個人レベルでもする必要があるとは思います。


④残業時間に対する手当の支給比率

100%が40%、全く支給されないが31%、75%程度支給が11%となっています。全く支給されないが31%もあることが一番の問題でしょうか?


私の病院でも、申請すれば100%支給はしますが、なかなか申請書が上がってこないのが問題だと感じています。申請書を上げにくいこともあるでしょうし、もともと残業代を払ってもらう習慣がなかった職場なので、その習慣がまだ払拭できていない感じです。


⑤有給休暇の取得日数(1年平均)

10~14日が24%、5日が11%、0日が8%、3日が8%といった感じです。全く取れない職場が8%ですか、有給の取得は労働者の権利なんですけどね~。


これも残業代と同じで、どうしても職場の雰囲気という暗黙の了解が存在しているところもあるのだと思います。私の職場では比較的有給消化率は高いのかなと感じています。


上司が積極的に使用すると、部下も使用しやすくなり、良い方向に進むと思うんですけどね。今は病院機能評価なんかでも有給の取得状況なんかも見るんじゃないのかなーと思ったりもするんですけどね。

副業、退職について


①主たる職場以外からの給与・報酬の有無

得ていないが73%、得ているが27%。みなさん、どうですか??アンケートの中でこの結果が一番私はびっくりしました。


およそ3割の方が職場以外からの収入があるらしいですよ。いわゆる副業ですね。


まぁ副業にもいろいろありますよね。休日に他の施設で非常勤として働いたり、中には理学療法士とは全く関係ない副業をされている方もいらっしゃるかもしれませんね。最近でゆーとブログによる収入ももしかしたらこの中に含まれているのかもしれません。


私の職場では就業規則で副業が禁止されていますが、もしかしたらもう古い考えなのかもしれませんね。確かに、最初この結果を見た時に思ったのは、「こんなに副業をしている人がいるのか!?」という驚きでした。


ただ、今この記事を書きながら改めて思ったことは、副業をする必要がある人がこれだけいるということが問題に感じました。


副業をしている方の中には、もちろん自分のキャリアアップや逆にキャリアを利用しての副業をしている方もいるのでしょうが、中にはメインのお給料だけでは十分といえないために副業をしている方もいるのかなと思います。


一般的な理学療法士のお給料では、子供を持ち、マイホームを建てるのは、難しいとまでは言えないかもしれませんが、容易なことではないと思います。そのためには、やはり副業の選択も必要なんですよね。


②退職回数

退職なしが50%、1回が28%、2回が12%、3回が6%といった感じです。んー、想像通りといえば想像通りでしょうか。


ちなみに退職理由は、今の職場を紹介されたが25%、職場に魅力がないが20%、地元に帰るためが20%、職場の人間関係が18%、給料が安いが11%でした。


もっと給料のことが上位に入ってくると思ったんですが、意外と低かったですね。紹介されることで退職する割合が高いというのは、やはり少なからずキャリアを積んだ人ということになるのでしょうか。


以上が簡単な要約になります。どうでしたでしょうか??意外とこのような数字で見ることはなかなかないので、少し新鮮だったのではないでしょうか。


改めて、ご自分や職場との比較の参考にしていただけたらと思います。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


理学療法士になるならおすすめは大学?専門学校?現役理学療法士の意見。

理学療法士になるには、大学で学ぶか、専門学校で学ぶかの2種類の選択肢があります。


短大もありますが、数が非常に少ないので今回は触れません。さらに専門学校では3年制にするか、4年制にするかの選択肢もあり、これから進路を考えている高校生は何を基準に選ぶか迷っているかもしれません。

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私は理学療法士になって10年ほど経っていますが、その中で大学と専門学校の卒業後の影響がどのようにあるのか、感じたことをまとめてみたいと思います。

私自身のことから


まず始めに、私は4年制の専門学校を選択しました。そんな私の簡単な経歴から。


私自身、理学療法士として10年ほど同じ病院で働いており、一応役職をいただき、管理者兼理学療法士として働いています。業務の割合としては、管理者より、圧倒的に理学療法士としての現場での仕事の割合が多いです。


私自身、高校一年生ぐらいからぼんやりと理学療法士になることは考えていたと思います。リハビリ関係で働いている兄弟がいたので、割と早い段階から考えていました。


ただ、学校を選ぶ際は、大学であろうと専門学校であろうと、同じ理学療法士になるのであれば、どちらも変わりないじゃないか??と思っており、通学が楽な方を選びました。


実際に、通学は自転車で通える範囲でしたし、実家から通えたので親の負担も少なくできたと思っており、今でも特に後悔はしていません。


しいて言えば、専門学校では研究方法論を学ぶ機会がなかったので、その点は少し臨床に出て苦労しました。ただ、学会発表に興味がなければ特に支障はありません。


さてそんな私ですが、今後、進路に迷っている高校生の方に理学療法士の現状を伝えたいと思います。

理学療法士の最終学歴について。大学、専門学校の割合は??


実際のところ、大学・専門学校、どっちの卒業者が多いのか??


答えは専門学校卒業者が62%、大学卒業者が28%。その他には大学院まで進学したりもありますが、<専門学校卒業が圧倒的に多いです。


このデータでは専門学校卒業者のうち4年制と3年制を一緒にまとめて出しているようなので、細かい内訳までは分かりません。ただ、3年制の専門学校自体少なくなっているので、4年制の専門学校の割合が多いのかなと思います。

大学と専門学校とで給料に差が出るのか??


まずは答えから、私の病院では大学卒だろうと、専門学校卒だろうと給料は全く変わりません。


なぜか?大学卒の理学療法士と専門学校卒の理学療法士が、同じ条件で患者様にリハビリを行っても、病院に入るお金(診療報酬と言います)は同じだからです。


病院の利益は大学卒だろうと専門学校卒だろうと変わらないので、当然支払う給料に差をつける必要はありません。ですので、私の病院だけでなく、他の多くの病院で給料に差はないと思います。


一部の病院や、○○市民病院や○○医療センターなど、○○に地名が入るような公立病院では少し給料に差が出るようです。


公立病院ではなぜ給料に差が出るか??大学や専門学校を卒業すると、学位や称号をもらえます。


大学を卒業すると学士という学位が付与されます。専門学校を卒業すると、高度専門士や専門士などの称号が付与されます。


4年制の専門学校を卒業すると、学校のカリキュラムによるのかもしれませんが高度専門士を付与されると思います。3年制の学校では専門士となる感じです。また4年制でも夜間部などでは専門士となります。


この違いにより、公的病院では給料に差が出てくることがあります。学士と高度専門士は同じ扱いとされているので、高度専門士を付与される専門学校卒では大学卒と同じ給料と思われます。


ただ、普通に働いている分には、学士だろうが高度専門士だろうが専門士だろうが、全く気になりません。


実際に、理学療法士の中で一番多いのは、専門士で46%。続いて学士で25%、高度専門士7.7%といった形で続いていきます。


将来、公的病院で働き、公務員としての理学療法士になりたいのであれば、大学もしくは高度専門士が付与される専門学校を選ぶ方が良いかもしれませんね。


ただ、公的病院は人気が高いので、倍率が高く、比較的就職するのに高い壁があることも事実です。




昇給・出世に違いがあるか??

まず昇給から。さきほども説明したことも関係しますが、大学卒・専門学校卒だろうとリハビリによる診療報酬は変わりません。ですので、学校によって昇給額に差をつける必要はないので、昇給に差はありません。


出世に関して。これも大学卒、専門学校卒だろうと差はないと思います。現に、私の職場で役職についている職員は大学・専門学校卒で半々くらいです。


おまけに最近の風潮から、「出世して仕事の負担が増えるより、平社員で気楽に働ける方が良い」という考えの若者が増えているそうですし。


病院経営者からすると、やはり学歴ではなく、病院職員としてのスキルで評価することが多いと思います。ただ、卒業後に大学院で修士や博士までの学位を取得すると、経営者へのアピールにはなると思うので、出世の可能性は上がると思います。

理学療法士としての能力の違いは??


私の印象では、卒業して2~3年ぐらいは大学卒の職員の方が能力が高いのかなーとゆー印象はあります。その子の元々の能力の高さも関係しているとは思うんですが。


もちろん、専門学校卒であろうと、能力が高いなーと思う子はいますよ。なので、一概にどちらかが高いとは言い切れないのですが、私の漠然とした印象です。


ただ、2~3年過ぎると、その差はほとんど感じなくなります。要は、就職していかに自分で勉強できるかが、理学療法士の質につながっているからです。


ただ、大学の方が卒業後も、大学のサービス(リハビリに関する文献を調べたり)を引き続き使えることが多く、比較的勉強しやすい環境といえるかもしれません。


また大学の方が、図書が充実しているので調べ物もしやすいですね。専門学校でもそのあたりの卒業後のフォローに力を入れているところもありますが。


そのあたりの卒業後のフォローを選ぶ基準にしてもいいかもしれませんね。在学なんで長くて4年ですもんね。留年するともう少し長くなりますが、、、。理学療法士として生きていくのは何十年とあるので、在学期間より卒業後の期間のほうが圧倒的に多いのですから。

卒業後のキャリアアップ


理学療法士になったとしても、生涯勉強をしていく必要があります。今より少しでも患者様をよくするためにはね。


その中でキャリアアップという形で、先ほども少し書きましたが、大学院に進学する方もいらっしゃいます。より深く勉強・研究したいという方達です。


大学院に進学することで、修士や博士などの学位を付与されます。病院によっては、出世や給料に影響が出ることもあるかもしれません。


ただ大学院に進学するには、それまでに大学を卒業して学士を取得するか、専門学校を卒業して高度専門士の称号を取得をしていなければ、大学院への進学自体ができません。


将来的に大学院までの進学の可能性を残しておくなら、そこも考慮して学校を選ぶ必要があります。


ただ、大学院まで進学する割合は、本当にごく一部です。2~3%程度ぐらいでしょうか。なかなか理学療法士として働きながら、大学院に進学するというのは、肉体的にもハードだと思います。


もちろん、そういった方々の研究が現場で働いている私たちの基本となっていくので、頭が上がらないのですが。




結局どっちがよいのか??


タイトルでも述べたんですが、私としては大学に入れそうな学力があるのであれば、大学入学を目指した方が良いかと思っています。


給料は変わりませんが、大学の講師や教授の方がやはり影響力を持っていると思います。それは学生である私たちへの影響力もそうですし、卒業後感じるであろう理学療法士になってからの影響力もあります。


働き出して、こんなすごい先生に授業をしてもらっていたんだということがあると思います。教授になれるのは、やはりその分野でのエキスパートですから、卒業後もその分野での相談・アドバイスを受けれるかもしれないことは、非常に価値のあることだと思います。


さきほども述べましたが、在学期間なんて4年間です。卒業後の期間の方がはるかに長いんです。卒業後の学校との関わり・フォローも、学校選びの一つの目安にしてもいいかもしれません。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


セラピストマネージャーの詳細について。理学療法士の給料・キャリアアップの参考に。

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セラピストマネージャーという認定制度があるのですが、回復期病院にお勤めでない方はあまり馴染みがないかもしれませんね。


病院に回復期病棟がある方や、回復期専従スタッフの方でほかのセラピストとキャリアで差をつけたいと考えている方、すでに管理職、もしくは将来的に管理職を目指してる方。


この記事がそういった方々の参考になればと思います。

セラピストマネージャーって何??


回復期リハビリテーション病棟の制度ができて、10年以上経過しました。病棟数は増加傾向にあり、すでに回復期リハ病棟に従事しているPT・OT・STの数は、約1万5千人を超えています。


その現状を踏まえて、回復期リハビリテーション病棟協会が平成23年より回復期セラピストマネージャーコースを開講しています。


目的としては、
質の高いリハビリテーションの提供は当然のこと、人的・環境的リスクに関するリスク管理及び他職種との協働。さらに病棟運営に寄与し組織管理を実践できる回復期リハビリテーション病棟におけるセラピストマネージャーとしてのセラピストを育成すること
だそうです。


単なる一セラピストとしての治療技術どうこうでなく、回復期リハビリテーション病棟をどのようにマネジメントするかの視点を学ぶということです。難しそうですが、確実に自分のキャリアアップにつながるでしょうねー。


視点としてはほぼ管理職ですよね。なので、将来管理職を狙っている方にはおすすめの資格です。

取得条件

応募要件は
①リハビリテーション病棟協会会員施設に所属していること。


②PT・OT・ST協会のいずれかに所属していること


③療法士免許取得後実務経験8年以上


④回復期リハビリテーション病棟実務経験1年以上


⑤施設長、または上司の推薦書があること


⑥回復期リハビリテーション病棟の質向上に強い意志を有すること
 ※申し込みの際に、申請書にセラピストマネージャー取得に対する意気込みを書く必要があります。


⑦全研修日程(6日間×3回)を通して参加できること。


以上の7点が応募要件になります


推薦書には、セラピストマネージャー取得後、取得者をどのように活用するかなども書く必要があります。




合格率は??試験の内容は??


公式HPやインターネット上に合格率や試験の詳細の情報は書かれていませんでした。


講習会の全日程終了後に試験自体はあるようです。どのような試験なのかは分かりませんが。ただ試験結果の点数が本人だけでなく、推薦者にも連絡があるようで、生半可なことはできませんね、、。

セラピストマネージャーの現状は??


平成23年から認定制度をスタートしました。認定講習会の募集人数は120名となっています。当初から毎年この人数で募集していたかは分かりません。


仮に毎年この人数で募集していて、全員合格したとすると600名のセラピストマネージャーが全国にいることになります。全国の回復期病棟施設からするとまだまだ、絶対数の不足ですね。


回復期病棟におけるセラピストマネージャーの配置状況は、全体で26.4%で配置ありだそうです。4施設うち1施設の回復期病棟には配置されている計算ですねー。この配置ありが、病棟に専従なのか、病院に在籍しているのかは分かりませんが。


入院料ごとの配置率は回リハ入院料1が32.4%、回リハ入院料2が19.5%、回リハ入院料3が9.5%です。


思ったより、配置率が高いのでびっくりしました。配置したところで、診療報酬上の加算はないんですが、回復期病棟に力を入れている施設では病院のバックアップ等も得られやすいのかもしれませんね。

資格取得・維持に必要な費用は??


さていよいよ費用のお話になります。私も取得を考えたことがありましたが、この金額を見て、到底個人レベルでの取得は無理だと思いました。施設のバックアップがなければ、、、、


その額、20万円!!高いのは高いですが、それだけのブランド力はあると思います。高いですが、、、



費用には18 日間の研修受講料・テキスト代・お弁当代・交流会費、認定授与式祝賀会代を含まれているそうです。祝賀会なんかは、豪勢な食事会のような感じで、そこでさらなる情報交換や横のつながりができそうです。


今後も、おそらく毎年募集人数上限に達すると思うので120名ずつ増えていくのでしょうが、セラピストマネージャーの具体的な付加価値を見いだせるかが大事になってくるでしょうね。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


NSTに関するまとめ。加算や現状、今後の流れ。

リハビリでは、近年リハ栄養という考え方が徐々に広がっています。栄養状態に関しては、以前から栄養サポートチーム、いわゆるNST(Nutrition Support Team)活動が行われていました。


みなさんの病院でもNST活動はされているでしょうか?もしされているのでしたら、有効に活動できているでしょうか?


本日はNSTの活動についてまとめ、今後の参考になればと思います。

NSTのはじまり


今でこそNSTといえば、患者の栄養状態ということにすぐ結びつくほど浸透していますが、いつごろから普及し始めたのでしょうか?


2001年に、日本静脈経腸栄養学会が主導のもと、全科型栄養サポートチーム導入の有用性を啓発し、その設立・運営を支援するNSTプロジェクトを立ち上げ、活動を開始したそうです。


開始して、15年ほどでここまで普及するとはすごいですね。潜在的に、このような活動の必要性を現場では感じていたんでしょうか?


私が、病院に就職したときはすでにNST活動が当たり前のようにあったので、それ以前のことは想像できませんが。




栄養管理実施加算、NST加算


もちろん、NSTの普及にはNST自体の必要性や有効性が関わっているとは思いますが、やはり診療報酬上の加算も大きかったかもしれませんね。


2006年に、栄養管理実施加算なるものが新設されました。管理栄養士、医師、看護師、薬剤師などが、入院患者ごとに栄養状態を評価し、栄養管理を行うことで加算がとれるようになりました。


その後、全国の97%の施設で算定されるようになったため、入院基本料に包括されました。この流れを見ると、患者の栄養管理は特別なものではなく、ルーチンに行われるべきものになったといえます。


2010年には、栄養サポートチーム(NST)加算が新設されました。


当初は、急性期病院だけでの加算でしたが、2012年の診療報酬改定により、慢性期病院でも算定が可能となっています。


まず急性期病院で栄養不良の患者の発生を食い止めようとの考えだったのかもしれませんが、やはりそれに続く慢性期病院でも引き続きの積極的な栄養管理は求められますよね。

NST加算の現状は??


ではNST加算の現状はどんな感じになっているのでしょうか??


2014年のデータでは、加算算定施設は1119施設となっています。加算が新設された2010年の加算算定施設が500施設程度なので、およそ2倍になっています。


JSPENに登録されているNST稼働認定施設数は2014年で、1487施設となっています。仮に、加算算定施設の1119施設がすべてJSPENにも登録している施設だとしても、算定施設の割合は75%ほどとゆーことになります。


もちろん、病院の特色や病床数などの規模によっても算定を行わない選択をする施設もあると思います。その理由は、NST加算の算定要件のハードルの高さと診療報酬が釣り合っていないためだと思います。


算定要件として、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士が栄養管理に係る所定の研修を修了する必要があります。医師は10時間以上、その他の職種は40時間以上の研修を修了する必要があります。


まず、この4職種すべてが研修を修了しているというのも、ややハードルが高いように思います。まぁこれは時間をかければ超えれるハードルではあります。この職種に理学療法士が含まれていないのが残念です、、、


次が問題ですね、この4職種のうち一人は専従でなければなりません。専従というのは、NSTに関わる業務しか行えないということになります。


多くの施設がこの専従には管理栄養士を設定していることが多いようです。管理栄養士の年収が4職種の中では一番低い場合が多く、平均年収が350万程度とされています。


NST加算は患者一人につき週1回200点を算定可能です。管理栄養士の年収を月で割ると、一カ月30万円程度になります。30万円の給与をNST加算で捻出しようと思うと月に150回算定する必要があります。


加算対象の患者の条件として
①栄養管理計画の策定に係る栄養スクリーニングの結果、血中アルブミン値が3.0g/dl以下であって、栄養障害を有すると判定された患者

②経口摂取又は経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者

③経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者
 
④栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者

との条件が設定されています。


はたして中・小規模の病院で月にこのような患者で150回算定できるでしょうか??そして本当に週一回の算定が必要な患者ばかりなのでしょうか??
このあたりは、モラルハザードとしても問題視されています。


また回診やカンファレンスには専従者だけでなく、他の職種の専任者も同行する必要があり、これも拘束時間が増えるためハードルになってしまいます。




NSTの課題


NST加算についての内容ばかりになってしまいました。一般的なNST活動についての課題をまとめてみます。


NST回診の意見はあくまで提案という形で主治医にあげることが多いと思います。ですので、やはり最終的な決定は主治医が行うので、100%NST回診の意見が実行されるわけではありません。


また、NST活動を積極的に行っていても、中心となる医師が異動することで、活動力の低下が見られることもよくあります。


あとは、先ほどもNST加算の話をしましたが、加算をとること自体にも高いハードルがありますし、取れたとしても施設に収益が出ることはなかなか容易なことではありません。


アウトカム評価やエビデンスが不十分なため、今後も構築していく必要があります。


NSTの今後


加算要件や報酬の見直しがなされることを期待はしますが、NST活動による病院の収益が直接的な診療報酬だけでなく、適正な栄養療法により抗生剤使用の減少や、早期離床、在院日数の短縮など、他のメリットに関してもしっかりとしたエビデンスが構築されていく必要があります。


そうすれば、目先の利益だけではなく、NST加算に取り組める可能性もありますね。


また、入院中だけでなく、退院後の地域での生活においても適切な栄養管理が行えるような、広い視野でのNST活動が行えるような枠組みができればおもしろいなーと思います。


在宅生活中の栄養状態が良ければ、もし入院することになったとしても予後は良い方に行くのではないでしょうか?リハビリでもやせ細った患者が入院してくるより、栄養状態が良い方がリハビリの進みも良好ですよね。


そのあたりも踏まえて、地域でのNST活動なるものができればいいなと思います。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


脳卒中後の意欲・自発性低下はアパシーが原因の可能性あり。

脳卒中後の患者に意欲・自発性の低下が見られる場合があります。脳卒中後にうつ(PSD)やアパシーが出現することが知られてきてはいますが、両者は臨床的に混同されやすく、回復期リハ病棟などでも不適切な対応をされがちです。


今回はアパシーについてまとめてみたいと思います。脳卒中後うつ(PSD)に関しては以前まとめた記事もありますのでそちらを参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com

アパシーの定義


脳卒中後うつ(PSD)に混同されやすい病態として、脳卒中後には自発性の低下を主体としたアパシーという状態を呈することがあります。


アパシーとは、感受性、感情、関心の欠如と定義されています。またアパシーは、動機付けの欠如によるものであり、意識レベル低下や認知障害、感情的な悲嘆に起因するものではないとされています。


アパシーとPSDは一部似たような症状が見られますが、全く異なる病態として認識しておくことが大事だと思います。また後で述べますが、薬物療法においても選択肢が異なってきます。下の図でそれぞれの症状と重複する症状を現しています。


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PSDでは自己に対して悲壮感などのネガティブな感情を抱きますが、アパシーは自己の状態に関しての内省的な感情は見られません。また病識欠如もアパシーの特徴的な症状です。

アパシーの診断と発症頻度


ある2つの回復期リハ病棟で、重度の認知機能低下や失語症患者を除外した196名のうち、アパシーと判断された患者は60名だったとの報告もあり、発症頻度は30.6%でした。


アパシーの診断には、海外のスケールを日本人向けに標準化した「やる気スコア」が使用されることが多いです。点数が高いほど意欲低下が強いと判断され、16点以上でアパシーと診断されます。


質問形式で、それに対する答えを4つの選択肢から選び点数化します。


①新しいことを学びたいと思いますか?

②何か興味を持っていることがありますか?

③健康状態に関心がありますか?

④物事に打ち込めますか?

⑤いつも何かしたいと思っていますか?

⑥将来のことについての計画や目標を持っていますか?

⑦何かをやろうとする意欲はありますか?

⑧毎日張り切って過ごしていますか?

全くない:3 少し:2 かなり:1 おおいに:0

⑨毎日何をしたらいいか誰かに言ってもらわなければなりませんか?

⑩何事にも無関心ですか?

関心を惹かれるものなどなにもないですか?

⑪誰かに言われないとなにもしませんか? 

⑫楽しくもなく、悲しくもなく、その中間位の気持ちですか?

⑬自分自身にやる気がないと思いますか?

全く違う:0 少し:1 かなり:2 まさに:3
16点以上がアパシー


比較的単純な質問ですし、時間的にもそれほどかかりませんので臨床的にも使いやすいと思います。




アパシーの原因


アパシーの病態には、前頭前野機能の低下が関与しているとの報告があり、アパシー症例では両側の前頭前野領域の血流低下が有意に見られたそうです。またアパシーは血管性認知用の前段階としても注目されており、今後も病態解明が期待されます。


またパーキンソン病の患者においてもアパシーが見られやすく、基底核病変の関与も考察されています。中脳ー前頭葉皮質投射系のドーパミンの枯渇がパーキンソン病の原因ではありますが、ドーパミンの低下がアパシーに関与を示唆しています。

アパシーの治療と対応


アパシーは、ドーパミンあるいはノルアドレナリン作動系神経の機能低下が関与しているとされ、ドーパミン作動薬により、改善が認められています。また、脳循環代謝改善薬でも、二重盲検試験で有意に意欲低下を改善したとの報告も見られてます。


漢方でも、唯一アパシーに有効とされているのが、釣藤散(チョウトウサン)らしいです。


アパシー患者は、目標や計画を立ててみずから行動することは困難ですが、外部からの誘導には比較的反応が良いことが多いです。対応としては1日のスケジュールを立て、そのスケジュール表に沿って活動するよう適宜促すようにしています。


退院後は、自ら行動しないために入院中と比べ活動量が減少し、廃用性に能力が低下しやすいとされています。また家族からも怠けていると誤解されやすいです。


退院後も活動量を維持するために福祉サービスを積極的に導入することやアパシーを理解してもらうための家族指導が大事だと思っています。


以上がアパシーについてのまとめです。PSDとの判別や、病態的に自発性・意欲が低下しているということをしっかり知識として持っておくと、患者さまとの関わり方にも工夫ができるかもしれませんね。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


アンガーマネジメントでイライラ・ストレス軽減。自分が楽になるための発想。

本日はアンガーマネジメント(アンガーコントロール)についてまとめたいと思います。


毎日生活する中で、イライラしちゃうことって誰にでもありますよね。


仕事のこと、学校のこと、家庭のこと、、、。思い返せばたいしたことでないことにイライラしたり、思い返してもまた怒りが湧いてくることもあったり。


イライラの種類や程度は、人それぞれかもしれませんが、少しでもイライラによるストレスが少なくなるお役にこの記事がなれば嬉しいです。
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私は、病院で名ばかりではありますが一応管理職についています。また、現場でも直接患者さまに接することもあります。


管理職としてのイライラもありますし、患者さまの、特に認知症など、理不尽な行動・言動によるイライラもあります。


もちろん、患者さまに対してはイライラを出さないようには注意していますし、それが病気によるものだとは理解しています。


なので、いかに自分の中でうまく処理できるか、その方法を探している中でアンガーマネジメントという考えがあることを知りました。

怒り・イライラの悪影響


人の心理・行動特性と疾病の関連について多くの研究が行われています。心理学では、人の性格傾向をタイプA、タイプB、タイプCの3つに分類することがあり、それぞれのタイプと疾患との相関が研究されています。


まずは3つのタイプの説明を簡単にします。


タイプA:①負けず嫌い・競争心が強い
     ②せっかち・短気
     ③成功欲・出世欲が強い
     ④常に時間に追われている 
といった性格傾向がある方をタイプAと分類されます。


タイプB:①穏やか・あまり怒らない
     ②無理をしない
     ③マイペース
④ゆったりと行動する   
といった性格傾向がある方をタイプBと分類されます。


タイプC:①周囲を気遣う
     ②感情を自分の中に抑え込む
③我慢強い
     ④真面目で几帳面     
といった性格傾向がある方をタイプCと分類されます。


この中で、イライラと関連があるのは明らかにタイプAの方でしょうが、このタイプAは狭心症や心筋梗塞などの心臓の病気の割合が明らかに多いそうです。


やはりイライラすると血圧が上がるような反応があるのでしょうね。私自身も、タイプAに当てはまり、できればタイプBのような穏やかな性格の方に憧れます。




アンガーマネジメントとは??


アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まったアンガー(イライラ、怒りの感情)をマネジメント(上手に付き合う)ための心理教育です。


人それぞれ、生活環境や仕事環境によってもいろいろな怒りの原因があると思います。


アンガーマネジメントは、幅広い分野で取り入れられてきているようです。


・人間関係でトラブルにならないように

・子育てで不必要にイライラしないために

・職場でイライラせずに効率的に仕事をするために

・学校で子どもたちの情操教育の一環として

・弁護士、医師などのストレスの高い仕事の人はストレス対策として

・経営者は、怒りにまかせた行動で信頼を失わないため、部下のマネジメントのため などなど。


さきほど私が病院で働いていることを書きましたが、やはり認知症患者などを相手にしている人や、自宅で介護している方などは少なからず、怒りを覚えることもあると思います。


そのような方にぜひ、アンガーマネジメントの発想を取り入れて、少しでもストレスが軽減してもらえたらと思います。


実際に、アンガーマネジメントを普及している日本アンガーマネジメント協会というものがありますが、その協会から講師という形で介護現場に講演をすることも増えているそうです。

具体的なアンガーマネジメントの方法


①怒りのピークは6秒間しかないことを知る


人が怒る際、イライラの感情ピークは6秒間しか続きません。6秒間経てば、徐々にイライラの感情は減っていきます。


このことを知っていれば、何か腹立たしいことがあっても、瞬間的に反応せず、6秒待てる可能性があると思います。


そうすれば、瞬間的に反応、例えば感情的に言い返したり、手がでるなど怒りが行動に移るなどの反応が少し減るかもしれません。


瞬間的に反応したことを、あとで振り返って後悔することは多くの方が経験したことがあると思います。そして、後悔すること自体がまたストレスになるという悪循環に陥りかねません。


なので、怒りのピークは6秒間しか続かない!このことを覚えておくだけでもその場の怒りをうまくやり切れるかもしれません。


②自分の許容範囲を広げる


怒るかの基準は人それぞれ。怒りには常に相手・対象が存在しますが、その相手・対象を怒るか怒らないかの判断はあなた次第なんです。


その判断は無意識にあなたの価値観に基づいて判断されています。


たとえば、あなたが部下と待ち合わせをするとします。あなたとしては、当然部下が待ち合わせの時間より早く来るべきだという価値観を持っているかもしれません。部下としては、待ち合わせの時間に間に合えば問題ないという価値観かもしれません。


怒りの原因は、その○○べきという価値観が裏切られることにあるんです。


なので、自分の○○べきという価値観に当てはめて怒るのではなく、べきの許容範囲を広げるように努力するとよいかもしれません。


そうすれば、待ち合わせの時間に間に合えば問題ないという部下の行動も許容できるかもしれませんね。


③怒る対象はあなたがコントロールできることなのか考える


例えば、認知症の方が頻繁にトイレに行きたがることがあります。病院でもしょっちゅう耳にします。


認知症による頻尿はあなたが怒ることでコントロールできることなのでしょうか?病気によるものなので、怒ったところで変化は得られませんよね。


あなた自身がどうやってもコントロールできないことに対して怒ったとしても、それは無駄なエネルギーを使っているだけということになります。


なので、あなたがコントロールできること、コントロールできないことの2つに分けて考えることで、コントロールできないことに対しては「しょうがないことなんだ」と、割り切ることで怒りを抑えることができるかもしれません。



以上、簡単に取り組める3つの方法を紹介させていただきました。


いきなり行動を変えるのは難しいことかもしれませんが、少しでもこの発想が頭の中にあれば、日々の出来事にも今までよりうまく対応できるかもしれません。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


歩行自立と転倒率について。自立の判断や身体機能以外の注意点について。

本日は歩行自立と転倒率について研究発表も紹介しながら、まとめてみたいと思います。


回復期リハビリテーション学会など、いろいろな学術大会で転倒率に関する研究発表がなされていますね。


いかに、入院患者の転倒を未然に防ぐかは、今後も重要な課題となります。特に回復期病棟では、転倒を予防しつつ活動性を向上させる必要があり、セラピストだけでなく病院全体での意識・取り組みが大事だと思っています。


病院全体の転倒に関する機能評価として、転倒率とゆーものがあります。転倒率とは簡単にゆーと、転倒した患者数/入院患者数で計算されます。


さらに歩行自立患者の転倒率を算出するには、自立後転倒した患者数/自立歩行獲得患者数で計算します。


これによって、歩行自立に移行した患者様が、その後どの程度の割合で転倒しているのか把握できます。


歩行獲得にかかわる理学療法士としてこの歩行自立後の転倒率には一定の水準を維持できるように、考察・対策をしなければなりませんね。

歩行自立後の転倒率について


色々な施設が転倒率を算出し発表されています。特に先行研究としてよく引用されている研究データは13~16%という転倒率だと思います。


実際に、私の病院の転倒率がどのくらいかは把握していなかったので、今後、転倒率の算出に取り組んでみてもいいのかなと考えています。


みなさんの施設では、転倒率の算出をされていますか?施設全体での転倒率の算出が難しいようであれば、セラピスト個人での転倒率を出してもいいかもしれませんね。


そーすれば、先行研究と比べることで自分の自立移行の判断が、一定の水準に達しているか考察できますね。


もしも、転倒率が高いのであれば、どの要素の評価が足りないのか、詰めていくことがまた自分のためになりますね。

歩行自立の判断に際して


歩行自立の決定はみなさんの病院ではどうされるのでしょうか??多くの病院は理学療法士の判断で自立に移行する場合が多いと思います。


中にはカンファレンスなどで、医師・看護師などの他職種で判断する病院もあるかとは思いますが。


では理学療法士は何を基準に歩行自立を判断しているのか??この基準に関しては何も設定されておらず、主に経験則など理学療法士の主観といってもよいのではないでしょうか??




歩行自立と評価スケール


中にはBBSやTUGなどのバランススケールを使用しているセラピストの方もいらっしゃるかもしれませんね。ただあれらのスケールはあくまでバランスを評価するためのスケールであって、歩行自立を判断するためのスケールではありません。


バランススケールを歩行自立の判断に活かせないか?という研究から歩行自立のカットオフ値が算出されたにすぎません。


なので本当に歩行自立を判断するためのスケールというものは私が知る限りありません。病院ごとでゆーと、いろいろなスケールを組み合わせて独自に歩行自立の基準を設けているところもあります。


おもしろい研究を読んだので、紹介させてもらいます。


理学療法士にアンケートをとったところ、95.2%の理学療法士が歩行自立の判断を行っているとのことでした。そのうち、評価バッテリーを使用している理学療法士が22.9%、その他の理学療法士は評価バッテリーを使用せず判断してるとのことです。


私個人もほとんどといってよいほど、自立の判断に評価バッテリーを使用していません。やはり経験則から判断していると思います。


が、セラピスト主観による判断だけで良いのか?と考えると、何かしらの客観的な材料も使用すべきなのかとは思います。


ただ、どうしても既存のバッテリーは歩行の中の一面しか評価できないような感じなんですよね。バランスはもちろんですが、高次脳機能の影響も多大にあると思うので、そのあたりを複合的に判断できるバッテリーがあればなーと思います。


SWWTtest(Stop Walking When Talking test)などやBESTestの項目に二重課題TUGなど歩行と高次脳機能とを組み合わせたものが少しずつ増えてきてはいますが。
BESTestについてはべつの記事にまとめているので参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


患者の能力以外の影響は??


また、私としては身体機能以外の面が転倒に影響していることもかなり意識しています。


例えば、服薬。抗うつ薬や催眠薬などの中枢神経作用薬を服薬していると、どうしてもふらつきが見られやすくなります。


ポリファーマシー(多剤併用)の記事にも書きましたが、服薬数が多くても転倒のリスクが高くなるとの研究もあります。
ポリファーマシーに関しては以下の記事を参考にしてください。
physicalkun.hatenablog.com


また夜間の排尿回数も、転倒との相関が見られており、自立に移行する際に、その辺りの情報も把握しておかなければなりません。


実際に、日中の転倒より夜間の転倒の方が多いとの研究発表が多く、私自身もそのような印象を持っています。


やはり、服薬や夜間排尿回数などの関係も見逃せないポイントだと思います。


歩行に関しては理学療法士の専門分野です。自立の判断や、もし転倒したとしたら、そこに対しての責任も理学療法士が負うぐらいの気持ちが必要だと思っています。


ただ、身体機能だけではなく、高次脳機能や患者様の内的要素もしっかり把握しなければなりません。そのためには、他のリハスタッフや看護師・薬剤師とも積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。


ぜひ参考に、若手・新人理学療法士におすすめの5冊の本・書籍。

本日は私がお世話になっている書籍についてまとめてみたいと思います。


有名なものが多いかもしれませんが、やはりそれだけ優れた書籍だと思います。


今回は、オーソドックスな内容とゆーか、理学療法士の基礎となる内容で優れた書籍を紹介しています。

アナトミー・トレイン


現在は第3版まで出ています。改版される度に内容の密度が濃くなってきていますねー。


学校では筋肉を個々に分けて勉強することが多いですが、筋肉同士のつながりをしっかり理解することで、治療・発想にも幅が出てくるように思います。


筋膜に対するアプローチが流行っていますが、その走りはこの書籍といってもいいのではないでしょうか?


特に新人理学療法士には、なるべく早い段階でこのような書籍に触れておいて欲しいです。全身の見方が変わってくると思いますよ。

ファッシャル・リリース・テクニック


先程紹介したアナトミー・トレインをどのように治療に発展させるかについて詳しく書かれています。


またボディリーディングは、姿勢観察からどのように筋膜のアプローチに発展させるかの考察が書かれており、非常に参考になります。


それが、全体像だけでなく各関節ごとに詳細に書かれており、よく整理されていると思います。


リリーステクニックだけでなく、解剖の面からも臨床に応用しやすく、今でも重宝しています。


内容的にはアナトミー・トレインとも重なる部分があるため、まずはどちらか一冊を購入してしっかり読み込むことをおすすめします。

筋骨格のキネシオロジー


私が学生の時から大変お世話になっている本です。解剖・運動をまとめて勉強でき、よくまとめられていると思います。


図解も多く、内容に伴う研究データも紹介されており、根拠を持って学習することができたかなーと思います。


カパンジーを購入するかで迷いましたが、キネシオロジーを購入しました。カパンジーも図が多く優れた書籍だと思います。


やはり解剖・運動学に関しては、理学療法士たるもの、自分の中の芯になるような良書を一冊持っておきたいですよね。


値段としては安くはありませんが、ずーっと使えることを思えば価値はあると思います。少しでも、分からないことがあるととりあえず確認してます。

気づけば第3版が販売されているみたいですね。


観察による歩行分析


歩行分析の基礎になる本ですね。最近、養成校によっては教科書としても使用されているところもありました。


やはり根拠を持った基礎がなければ、その上に積み上げられるものも限界がありますね。


ずーっと使える一冊だと思います。

動作分析 臨床活用講座―バイオメカニクスに基づく臨床推論の実践


基本動作を中心にバイオメカニクスの面からどのように捉え、どのようにアプローチするか、非常に分かりやすく書かれています。


バイオメカニクスと聞くと、少し堅苦しいイメージを持つ方もいるとは思いますが、実際の動作をイメージしやすく書かれているので、読みやすいですよ。


今回はこの5冊を紹介させていただきました。


私が薦めるまでもなく有名な書籍かもしれませんが、少しでも参考にしていただけると嬉しいですね。


本日も最後までお付き合いありがとうございました。